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出産育児一時金直接支払制度の概要と活用するメリットと注意点

出産育児一時金直接支払制度の概要と活用するメリットと注意点

出産育児一時金直接支払制度とは

出産育児一時金直接支払制度とは

 出産育児一時金直接支払制度とは、出産した医療機関に対して、健保組合が直接出産育児一時金を支払う制度です。この制度により、医療機関の窓口での支払いは出産育児一時金を超えた金額だけで済みます。

健保組合が出産育児一時金を直接支払う制度

 出産育児一時金直接支払制度は、健康保険の運営主体である機関が医療機関に出産育児一時金を直接支払う制度です。協会けんぽに申請すると、医療機関に直接出産育児一時金が支払われるため、高額な出産費用をあらかじめ用意する必要がありません。支給額は誕生した子ども1人あたり42万円です。もしも、双子以上の場合は産まれた人数分だけ支給されます。

 産科医療補償制度加算対象でない病院で出産した場合や22週未満で出産した場合には、支給額は40万4,000円です。

申請が必要になる

 出産育児一時金直接支払制度を利用するには、事前に申請が必要です。分娩予約から退院するまでの間に制度の説明があります。病院からもらう「直接支払制度合意書」に必要事項を記入して申請します。扶養に入っている場合は配偶者の署名も必要です。

 出産育児一時金を受け取るには、健康保険に加入していることも条件となります。入院時に支給対象となる健康保険証を提示しましょう。退職した勤務先の健康保険を利用して給付を受けたい場合は、健康保険証に退職した勤務先の健康保険資格喪失証明を添付する必要があります。

 直接支払制度に対応していない病院の場合には自分で市に申請して「受取代理制度」を利用しましょう。

出産育児一時金直接支払制度の特長とメリット

出産育児一時金直接支払制度の特長とメリット

 出産育児一時金直接支払制度は、安心して子どもを産み育てられるように施行された制度です。自分で高額な出産費用を用意する必要がない点に加えて、次のようなメリットがあります。

出産資金を立て替える必要がない

 出産育児一時金直接支払制度は、あらかじめ高額な出産費用を用意する必要がない点がメリットです。出産には高額な費用がかかりますが、健康保険組合から医療機関に一時金が支給されるため、立て替える必要もありません。

差額を受け取れる

 出産費用が出産育児一時金未満でおさまる場合があります。出産育児一時金に満たなかった場合、差額は申請すれば受け取ることが可能です。

 申請方法は「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」と「健康保険出産育児一時金差額申請書」の2パターンです。

 健康保険組合から医療機関へ出産育児一時金の直接支払いが行われると「支給決定通知書」が届きます。通知書が届く前に「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」を申請します。

 「健康保険出産育児一時金内払金支払依頼書」を利用する場合は次の書類を添付します。

  • 医療機関等から交付される直接支払制度に係る代理契約に関する文書の写し
  • 出産費用の領収書・明細書の写し

 申請書の証明欄には、医師・助産師・市区町村長に出産に関する証明を記載してもらいましょう。医療機関等の領収・明細書に「出産年月日」および「出産児数」が記載されている場合は必要ありません。

 「支給決定通知書」が届いてから申請を行う場合には、「健康保険出産育児一時金差額申請書」を利用します。このケースでは添付書類は必要なく、差額の支払いは振り込みで行われます。

早産や海外での出産でも支給される

 妊娠4カ月以後の早産、死産、流産、人口妊娠中絶も出産育児一時金の支給対象です。海外で出産した場合も対象となりますが手続きが必要になります。

 海外で出産した場合には次のことを証明する必要があります。

  • 出生したお子さまが被保険者の被扶養者に認定されている場合

    【申請書所定欄に次のいずれかの証明】

    • 医師・助産師の証明
    • 市区町村の証明

    【上記証明が受けられない場合】

    • 戸籍謄(抄)本
    • 戸籍記載事項証明書
    • 出生届受理証明書
    • 母子健康手帳
    • 住民票
  • 出生したお子さまが被保険者の被扶養者ではないが、日本国内に居住している場合
    • 日本国内の公的機関が発行する戸籍謄(抄)本等の出産事実が確認できる書類
  • 出生したお子さまが被保険者の被扶養者ではなく、海外に居住している場合または死産の場合
    • 現地の公的機関が発行する戸籍や住民票等の住民登録に関する書類

    上記書類が添付できない場合

    • 出産を担当した海外の医療機関に対し、協会けんぽが照会することに関する同意書

出産育児一時金直接支払制度を申請するときの注意点

出産育児一時金直接支払制度を申請するときの注意点

 出産育児一時金直接支払制度は高額な出産費用を支給してもらえる制度です。ただし、注意点もいくつかあります。

42万円を超えた分は支払いが必要

 出産育児一時金直接支払制度で支給される金額は、一児につき42万円のため、出産費用全額を支払ってもらえるわけではありません。もしも、出産費用が出産育児一時金の額を超えると医療機関などに差額を支払う必要があります。

 例えば出産費用が48万円だった場合は差額の6万円は窓口で支払う必要があるため、退院の際にお金を用意しておく必要があります。

クレジットカードのポイントが付かない

 出産育児一時金直接支払制度を利用する場合、クレジットカード払いにすることで、ためられるはずのポイントが付かないということもデメリットでしょう。

 例えば還元率1%のクレジットカードで42万円を支払った場合、4,200円分のポイントが還元されます。

 出産育児一時金直接支払制度を利用すると医療機関に直接一時金が支給されるため、全額クレジットカード払いにはできず、ポイントの還元は自己負担額のみとなります。

 どうしてもクレジットカードで全額支払いたい場合は、医療機関がクレジットカード決済に対応しているのか確認したうえで、出産育児一時金直接支払制度を利用せず、自分で出産費用の支払いを済ませた後に出産育児一時金を請求すると良いでしょう。

出産費用が42万円未満の場合は手続きが2回になる

 出産費用が出産育児一時金未満になることもあります。この場合、差額を現金で受け取ることが可能です。差額を受け取るためには再度手続きを行う必要があります。

 直接支払制度を利用して、医療機関等への支給が終了すると「支給決定通知書」が被保険者宛に届きます。差額がある場合には「差額申請書」を協会けんぽに提出し手続きを行うことが可能です。

出産育児一時金直接支払制度の手続きの流れ

出産育児一時金直接支払制度の手続きの流れ

 出産育児一時金直接支払制度を利用するには事前の申請が必要です。医療機関から説明があるケースがほとんどですが、申請を忘れないように手続きの流れをしっかり把握しておくことも大切です。

 出産育児一時金直接支払制度の手続きの流れを解説します。

必要要件を満たしているか確認する

 出産育児一時金直接支払制度を申請するには、本人か配偶者が健康保険に加入していることと、妊娠4カ月目以降であることが条件です。もしも流産・死産・中絶などの正常分娩以外だった場合でも、妊娠4カ月(85日)が経過していると給付の対象になります。

 妊娠中に退職し出産したケースでは、退職後6カ月以内である条件を満たしていれば、以前加入していた健康保険組合から出産育児一時金が支給されます。

合意書を提出する

 医療機関から直接支払制度に関する説明があった際に、医療機関所定様式の「合意書」の提出が求められます。「合意書」を提出し、出産育児一時金直接支払制度を利用する意思を示すことができます。

出産育児一時金直接支払制度を申請するときのポイント

出産育児一時金直接支払制度を申請するときのポイント

 出産育児一時金直接支払制度を利用すると、あらかじめ出産費用を全額用意する必要がありません。申請する際は次のポイントを確認しておきましょう。

支給金額がどれくらいになるか知っておく

 出産育児一時金直接支払制度の支給額は42万円です。ただし、出産時の条件によって金額が変動することもあります。例えば、出産する病院が産科医療補償制度対象外のときは40万4,000円に減額となります。

 産科医療補償制度とは、医療機関などが加入する制度です。制度に加入している医療機関で制度対象となる出産をした際、分娩時の何らかの理由で赤ちゃんが重度の脳性まひになった場合、赤ちゃんと家族の経済的負担を補償する制度になります。

出産費用を確認して病院を選ぶ

 厚生労働省の調べでは2019年度の出産費用の平均は46万217円です。提供サービスによっては出産費用が100万円を超えることもあります。このように出産費用は一律ではないため、事前にネットなどでどの程度の費用がかかりそうか調べておくと安心です。

 出産育児一時金を超えた額は自費となるため、できるだけ支給額の範囲内または自己負担額が少なくて済む医療機関を選ぶのもポイントとなります。

直接支払制度以外で出産費用を抑える方法

直接支払制度以外で出産費用を抑える方法

 出産育児一時金直接支払制度以外で出産費用を抑える方法もあります。その他の公的補助制度の活用と出産にやさしい住宅ローンを選ぶという2つの方法を解説します。

その他の公的補助制度を活用する

 出産育児一時金直接支払制度以外に利用できる公的補助制度は次の6つです。

  • 出産手当金
  • 高額療養費制度
  • 医療費控除
  • 失業給付金
  • 所得税の還付金
  • 傷病手当金

 出産手当金は、健康保険制度から支給されます。働いている場合、出産のために仕事を休んでいる間に給与が支払われなかった際に受け取ることができます。支払われる金額は次の要件で算出されます。

  • 対象となる期間:出産予定日の前42日(多胎妊娠の場合98日)と、出産翌日~56日目までの範囲で、仕事を休んだ期間
    • 出産予定日が遅れた場合にはその期間も含む
  • 1日あたりの手当金額=標準報酬月額÷30日×3分の2
    • 健康保険の加入期間が12カ月未満の場合は計算方法が異なる

 高額療養費制度は、入院や治療によってひと月あたりの自己負担額が一定の金額を超えた場合、申請によってその超過部分についての払戻しを受けることができる制度です。自己負担限度額は次のとおりです。

  • 70歳以下で、標準報酬月額27万円~51万4,999円(窓口負担3割)の場合、1カ月の医療費が総額100万円を超えた場合、自己負担の限度額が8万7,400円になります。ただし、入院時の食事代・差額ベッド代・先進医療などの保険外診療は対象外です。

 医療費控除は、自分や家族が支払った医療費等の負担額が、年間10万円を超えた場合、超えた金額をその年の所得から差し引くことができる制度です。控除金額の上限は200万円で、出産でかかる医療費や定期健診の費用も対象になります。

 失業給付金は、仕事をやめた際に雇用保険から支払われる失業保険です。働いていた期間にもよりますが、基本的には給料の5割~8割が被保険者であった期間に応じて支給されます。

 所得税の還付金は、年度の途中で退職し確定申告を行った場合に還付される所得税のことです。

 傷病手当金は、健康保険等の被保険者が病気やケガのために働くことができず、事業主から十分な報酬が受けられないときに支給される制度です。

 1日あたりの報酬額の3分の2×休業日数が支給されます。(最長1年6カ月)

出産にやさしい住宅ローンを選ぶ

 出産育児一時金直接支払制度を利用すれば出産費用を抑えることができます。とは言え、育児にはお金がかかります。そこでおススメしたいのが育児にやさしい住宅ローンの利用です。常陽銀行では働く女性のための住宅ローン「ロング・エスコート」を提供しています。

 「ロング・エスコート」は、出産や育児期間の2年間はローンを利用していても利息のみの支払いだけになるローンです。子育てでお金のかかる時期でも安心して利用できるため、出産を機に新築や家の建て替えを検討する際には一度窓口でご相談ください。

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まとめ

まとめ

 出産育児一時金直接支払制度は手続きが簡単で、高額な出産費用を自分で準備する必要がない便利な制度です。経済的な不安を軽くして安心して出産にのぞめるよう、事前にしっかりと理解して手続きを進めておきましょう。

(2022年6月28日)

本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
コラム内容を参考にする場合は、必ず出典元や関連情報により最新の情報を確認のうえでご活用ください。

以上

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