お金以外に聞いておきたいこと―病気、葬儀、ペット、資産など―

エンディングノートのつくり方や確認しておきたい項目をご紹介します。

 お金のことだけでなく、「家族に迷惑はかけたくない」「お葬式にあの人を呼んでほしい」など、もしもの時のことも聞いておきたいもの。

 病気や葬儀はどうしたいか、ペットや資産はどうするかなど希望を整理し、エンディングノートに記しておきましょう。難しく考えずに作成してみることが大切です。親が作成するだけでなく、親から聞き取り子が記していく方法もあります。

目次

病気に関する内容は、どのようなことを書けば良いですか?

①もしもの時に「会いたい人」や「知らせてほしい人」は?

 ひとくちに交友関係といっても、「仲の良い友人」「ちょっとした知人」「お世話になった方」「同じ趣味の仲間」など様々です。また、その中でも、入院した場合に会いたい人はいるか?苦手な人はいないか?などは本人でなければ分からないものです。

 そこで、病気になったらどうするかを考える場合、まずは交友関係を次のように分けてもらうと便利です。

  • 入院などで療養していることを知らせてほしい人
  • 亡くなったらすぐに知らせてほしい人、葬儀にきてほしい人
  • 葬儀が終わって落ち着いてから知らせてほしい人
  • 同窓会のメンバーやサークル仲間などに知らせてくれる代表的な人

②延命治療をどうするか?

 治療しても回復が見込めず、死が近づいている状態を「終末期」と言い、終末期には命に関わる様々な判断が必要になります。

延命治療の例

  • 飲食ができなくなった際に胃ろうをするか(胃に小さな孔をつくり、直接流動食を入れる)
  • 呼吸状態が悪くなったので人口呼吸器をつけるか
  • 心肺停止状態になった際に人工呼吸や心臓マッサージで蘇生を試みるか

 これらの判断は本人の意思で行われることが望ましいですが、本人は意識障害や認知症により意思表示ができないこともあり、家族が本人の意思を推測したり、家族が医師と話し合って対応を決めることになります。この場合、家族の中で「延命治療をして回復の可能性を探りたい」「これ以上苦しい思いをさせたくない」など意見が衝突することがあります。また、後になって「あの時の判断が正しかったのか…」と後悔することもあります。

 そこで、本人の意思を尊重するため、また家族が思い悩むことがないように、終末期にどのような医療を受けたいかを確認しておくことが重要です。特に、「延命治療を望むか」「痛みや苦痛を取り除く緩和ケアを希望するか」などをエンディングノートに記載しておくと安心です。

葬儀に関する内容は、どのようなことを書けば良いですか?

 最近は葬儀を簡素化する方も増えているようですので、まずは「自身の葬儀をどうしたいか?」を書いておきましょう。

葬儀をしてほしいか、してほしくないか

 葬儀をする場合、密葬や家族葬、社葬といった選択肢もありますので、希望する様式も聞いておくと良いでしょう。

戒名をどうするか(仏教の場合)

 仏教の場合、戒名をどうするかについて遺族が迷うケースがあります。戒名とは「仏の弟子になったことを表す名前」であり、墓石や位牌に記されます。戒名を付けてもらう際のお布施は数万円~100万円を超えるところまで、寺院や戒名のランクによって異なります。一般的に「信士・信女」→「居士・大姉」→「院信士・院信女」→「院居士・院大姉」の順にランクが上がり、金額も高くなります。

 遺族としては「低いランクにするのは忍びない」「本人が恥ずかしくないように高いランクにしたほうが良いのか」など、かなり悩むことになります。事前に親に希望を聞いておけば迷うことがなくなりますし、最近では戒名はいらないという方もいるようです。

遺影の写真はどれにするか

 葬儀の準備のなかで大事なことの1つに遺影選びがあります。今は、背景を削除したり、小さめの顔写真を引き伸ばして遺影にすることもできますので、その方らしい良い写真を選びたいものです。「遺影の写真はどれにする?」とはなかなか聞けませんから、本人が気に入っている写真を覚えておくと良いかもしれません。また、特別なイベントではなくても、機をみて沢山の写真を撮っておくのも良さそうです。

葬儀の演出やメッセージはどうするか

 最近は葬儀の際に故人が好きだった音楽を流したり、趣味の作品を飾ったりと個性的な演出をすることもあります。故人が望むようにしてあげることで、見送る側にも慰めになります。また、香典返しの品に沿える会葬礼状を故人が生前に自ら用意するケースもあるようです。会葬者に伝えたいメッセージがあれば、簡単でも良いのでエンディングノートに記しておくと良いでしょう。

どんな骨壺が好みか

 骨壺にも様々な種類があり、生前に自身で選んでおくことができます。「花柄が良い」「土に帰る木の骨壺が良い」「故郷の焼き物が良い」など、希望があればエンディングノートに記しておきます。

互助会に入っていないか

 自分自身の葬儀に備えて、互助会に加入しているというケースもあります。互助会は、毎月一定額を積み立てたり、纏まった金額を一括払いして、お葬式の費用に充当する仕組みです。また、会員特典として料金が割引になるサービスなどもあるようです。

 互助会に入っていても、遺族が加入していることを知らないと利用することができません。毎月の引き落としがあれば、遺族が通帳で確認することもできますが、加入していることや証書の場所などをエンディングノートにメモしておきましょう。

お墓をどうするか

 お墓についても、家族で話し合っておくと良いでしょう。先祖代々のお墓がある菩提寺があれば、葬儀などの仏事を依頼し、そこに納骨する流れが一般的です。しかし最近は、菩提寺の墓を「墓じまい」して、別のお寺や場所にお墓を建てるケースもあります。特に、自宅とお墓が遠い場合は、先々のことも想定しておく必要があります。

 また、墓じまいする場合だけでなく、「先祖代々のお墓に入りたくない」や「お墓がない」ケースでは、どこに納骨するかを考えておく必要があります。新たにお墓を建てる場合、都心では300万円程度、郊外では200万円程度からが目安と言われています。

 お参りする場所はほしいが管理は難しいという場合は、「永代供養墓」という方法、お墓を持たない「自然葬」という方法もありますので参考にしてください。

ペットや遺品について書いておくことはありますか

①ペットのこと

 犬や猫などのペットがいる場合、飼い主が亡くなったらペットをどうするかを考えておきましょう。飼育費用をどうするか、かかりつけ獣医についての情報なども記しておくと安心です。

ペットをどうするか

  • 家族が引き取る
  • 知人や友人が引き取る
  • 飼育してくれる人を探す
  • 動物愛護協会に委ねる など

②パソコンや携帯電話のこと

 パソコンや携帯電話(スマートフォン)は、契約している会社やプロバイダをメモしておきましょう。亡くなった場合には解約手続きが必要であり、失念すると利用料金がかかり続けます。

 パソコンは使いたい人に譲るということもありますが、パスワードが分からないと使用できないケースもあります。一方で、プライバシーに関する情報も入っていますので、「必要に応じて残す情報」と「プライバシーの確保」の両面から考えていきましょう。携帯電話は、データを含めて通信会社が処分してくれることもありますので、相談してみてください。

③手紙や日記のこと

 手紙や日記はあくまでもプライベートなものです。家族に見てほしくない場合は、エンディングノートに「読まずにそのまま処分してほしい」ということを記しておくと良いでしょう。

④遺品全般について

 遺された家族にとって遺品整理は大切な作業です。処分に困ったり、判断に悩んだりしないように、意思を表示しておくことが望ましいと言えます。

 例えば、時計や貴金属などを特定の人に譲りたい場合、「誰に」「何を」譲りたいかを記載します。洋服やアクセサリーなど、故人が愛用していたものは、家族にとって処分しにくい心理が生じます。「遺してほしいもの」「誰かに譲りたいもの」を明確にして、それ以外は処分して良いと書いておくことで、遺品整理はスムーズに進みます。

 常陽銀行では、パソコンやスマホで手軽に大切な情報や意向を整理でき、ご家族と好きなタイミングで共有できるデジタル版エンディングノート、情報承継サービス「あんしんノート」を取り扱っています。セキュリティは万全で、必要に応じて対面でのサポートも受けることができるため、「終活の一歩」として、親世代は勿論、子世代のお客さまからも好評を得ております。エンディングノートや遺言書と比較して、自分にあった最適な方法を検討してみましょう。

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【監修】井戸 美枝(いど みえ)

CFP、社会保険労務士。国民年金基金連合会理事(非常勤)。
経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞の連載記事の執筆をはじめ、講演、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を紹介。
近著に『身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと』(東洋経済新報社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください』(日経BP社)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)など。

井戸 美枝

(2022年5月24日)

本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
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以 上

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