地域に咲く、協創ストーリー
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「変化し続けること」が、地域企業の成長のカギ~資本と経営を分けて考える 事業承継支援~

株式会社あ印 代表取締役社長鯉沼 勝久氏
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1887年創業、茨城県那珂湊地区での海産物販売業からスタートした株式会社あ印様。
たこを中心とした海産物加工業を手がけ、
とくに大手量販店向け商品の製造・販売で成長を続けられています。
代表取締役社長 鯉沼氏に、創業から130年以上地域とともに歩み続ける同社が、
いま取り組む新たな挑戦、未来の展望についてお話しいただきました。

地域とのつながりと変化の歴史

地元・ひたちなか市で成長を続ける理由について、どのようにお考えですか?

鯉沼氏 : 海産物の販売をスタートさせた創業から130年以上の長い歴史を、まさに地域とともに歩んできたという実感があります。というのも海産物加工には多くの人の力が必要であり、設立からずっと地元の方にご協力をいただいてきたからです。

かつての現場は力仕事が中心で、海外からの労働力に頼る時代も長かったのですが、やがて当社が調味加工品により力を入れるようになり、機械化による業務の簡易化・平準化が進んだことでまた地元スタッフの活躍も増えてきました。こうした人を通じた地域とのつながりは、当社の成長に欠かせないものだったと考えています。

一方、成長を続けるためには「変化」も欠かせません。当社は同族経営企業だからこそ、新しい世代が旧体制をあえて否定し、これまでにない視点ややり方を柔軟に取り入れることを続けてきました。私自身がかつてそうであったように、いま常務を務める息子も経営に対してズバズバ意見を言ってきますよ。こうした風通しが良い風土も、長く地域に根付きながらも会社が前進するための大きな力になっていると思っています。

さらなる成長に向けた社内改革

現在は常務が中心となって、社内体制の改革を進めていらっしゃるそうですね。

鯉沼氏 : はい、彼はもともと大手食品メーカーに勤務していたのですが、そこで培ってきた知識や経験を活かして主に社内体制の見直しや改革を積極的に進めてくれています。

たとえば人事面では評価制度を大きく変えようとしています。属人的になってしまいがちだった各現場の業務を見直し、それぞれの役割を明確にすることで、これまで以上に成果を評価をしていく体制へ移行します。現在は新たな評価基準や運用方法を検討・策定しているところです。

また、業界的にFAXなど紙のやり取りも多く残っていたのですが、彼の提案で社内のデジタル化が一気に進みました。社内でやり取りする情報は全て電子データ化し、パソコン上での管理に統一。社内システムもより新しく使いやすいものへ全面的に入れ替えを行いました。

社内にはどのような変化がありましたか?

鯉沼氏 : 新しい評価制度はこれから本格化導入というところではありますが、工場のスタッフも売り上げだけでなく、より現場でかかるさまざまなコストを差し引いた利益を意識するようになってきたと感じています。またデジタル化により業務の無駄が減ったことで、効率化が進みスタッフの働きやすさにもつながっているのではないでしょうか。

もちろん、これまで社内で続いてきた流れを変えることは決して簡単なことではありません。こうした大きな改革は、現場スタッフの理解や協力があって初めて実現できるものなので、本当にありがたいことだと思います。

「財産承継」を先行して進めるという決断

常陽銀行では、経営の安定やさらなる成長に向けて、数年前から事業承継のタイミングについて議論させていただき、事業承継のお手続きも支援させていただきました。

鯉沼氏 : 事業承継はいつか進めなければと考えていたのですが、日々の業務に追われてつい後回しになっていました。また、そもそも現在の事業承継における税制度に納得できない部分があったことも大きかったです。

ネックになったのは、私が会社を継いだタイミングと比べて株価が大きく上昇を続けていることで、息子へ株を移すにあたり相続上の負担が大きくなる可能性があるということです。懸命に努力して家業を成長させてきたにも関わらず、相続で負担が重くなる事実は受け入れがたく、常陽銀行さんと何度も議論を重ねさせていただきましたが、やはり今がタイミングなのだろうと判断しました。結果的にルールに則った財産承継は実現しましたが、不満は残っていますね。

とくに業績が好調な企業さまの場合、いざ事業承継をしようというタイミングで株価の上昇に伴い相続に思わぬ負担がかかってしまうということも考えられました。

そのため今回ご提案させていただいたのは、「株の移譲」と「役職の移譲」を切り分けること、つまり社長が現役で代表取締役を務められてるいまから、後継者へ株を移すお手伝いをさせていただくことでした。これは社長の未来を見据えたご決断や、社内のご理解があってこそ進められたことだったと感じています。

事業承継に関してスペシャルな解決策はない。

鯉沼氏 : いただいた提案自体は、私の抱いていた不満を解消するほどのスペシャルな提案だとは決して思いませんが、現在の税制度においては今回のような選択肢の他なかったのだと思います。いずれにせよ当社にとって、次代へバトンタッチするタイミングだったということでしょうね。


常陽銀行では、社長が決断されるまで、事業承継に対する不安に寄り添い、さまざまな選択肢があるなかでそのメリット、デメリットの説明など、不安の一つひとつを丁寧に取り除くお手伝いをさせていただきました。
すぐそばにいて、「相談できる」「駆け付けられる」、そして、「適切なアドバイスができる」そんな存在であることが我々常陽銀行の強みです。

既存のやり方に縛られず、柔軟に変化する

今後の展望を教えてください。

鯉沼氏 : 水産業界全体の動きとして、海外での買い付け状況が大きく変化しています。近年は国内市場のパイが縮小していることから大手水産会社・商社が手を引く動きがあり、さらにスペインやイタリアなどに買い負けをしている状況も続いているのです。これは日本ではスーパーなどで並ぶような海産物が、ヨーロッパでは高級レストランのメニューとして扱われるように変化してきたため。とくにたこは調理法によってはワインにも合うので、現地の食文化にも馴染みやすく急激に需要が高まっているんです。

こうした不安定な供給状況を打破するためにも、現在は我々自らが新しい産地や素材を探すことに取り組んでいるところです。たとえば当社の看板商品はたこですが、これまでに扱ってきたいかやえびなどの他にも魅力的な素材や養食品なども増やすことで、より安定的に、高品質の商品をお客さまへお届けできる体制をこれからも探っていきたいと考えています。

最後に、これからの常陽銀行に期待することを教えてください。

鯉沼氏 : 事業承継を実際に経験した立場からすると、日本の税に関する法律やルールがもう現実に合わなくなってきていると感じています。次の時代を担う若い人たちが、もっと夢を持てるような制度に変わっていかないと難しい時期ではないでしょうか。

なぜいまこれだけM&Aを選択する会社が多いのか、この国の金融に関わる立場の方々にはぜひ根本にある問題について考えてもらいたいですし、地域の金融機関として、声をあげてもらいたい。そして、社会がより良く変わっていくことを期待したいですね。

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