
地域No.1のインフラドクターを目指して
御社が向き合う「地域課題」について詳しく教えてください。
柳瀬氏 : 当社の本社がある大子町は、県内でも人口減少が著しく、若年層の定着が難しい地域です。道路や護岸、法面工事といったインフラ整備を担う当社にとって、人材不足は大きな課題です。さらに災害の多発に備え、予防保全と迅速な復旧が求められています。私たちは「地域No.1のインフラドクター」を掲げ、土木と法面工事を一体で行える強みを活かして地域の安全を守っています。

御社がその「地域課題」の解決に取り組むようになったきっかけ、想いをお聞かせください。
柳瀬氏 : 創業以来100年以上、地域と共に歩んできたなかで「貢献」と「共生」という経営理念を大切にしています。建設業は人々の生活と直結し、私たちは怪我をしたときに包帯を巻く医師のようにインフラを守る存在でありたいと思っています。災害時には真っ先に現場に駆けつけ復旧に尽力することが使命です。また、男性中心の建設業界にあって女性が活躍できる環境づくりを進め、私は茨城県建設業協会の「建女ひばり会」の会長として業界全体の働きやすさ向上にも取り組んでいます。

人的資本経営を支える取り組み
その「地域課題」解決のため、具体的にどのような取り組みをしていますか?
柳瀬氏 : 当社の最大の強みは、県内に3社しかない法面工事専門会社でありながら、道路工事を含む土木工事も一貫して行えることです。法面工事は斜面を保護する特殊な仕事であり、予防・補修・補強の全てに対応できる体制を整えています。工事部では若手育成に力を入れ、危険が伴う現場でも経験とチームワークで克服していることが強みです。
労働環境の改善にも早くから取り組み、週休二日制や月給制を導入。2023年度には技術者の書類作成や積算業務を支援する建設ディレクター課を新設し、現場の負担軽減と作業効率化を進めました。法面と道路工事、建材調達を一本化できることで、お客さまのコスト削減や工期短縮にも貢献しています。さらに女性が働きやすい環境を整え、子ども休暇や1時間単位の有給制度を導入するなど多様な働き方を推進しています。

組織診断で見えた課題と成果
従業員満足度調査ではどのような成果や課題が見つかりましたか?
柳瀬氏 : 常陽銀行さんの協力で実施した従業員満足度調査(組織診断)により、社員が日々感じている満足点や不満点が浮き彫りになりました。良い点としては、従業員の多くが、法面+土木工事施工による地域貢献への誇りを感じている点や、事業方針や労働環境改善の取り組みに対して理解を示している点、現場の雰囲気やコミュニケー ションが良好な点などが挙げられました。一方で、人材維持確保に向けた取り組み強化や事業方針の明示化などといった課題も見えてきました。この結果をもとに、人事制度の再構築や事業計画策定に向けた取り組みを進めています。

人的資本経営に必要な姿勢や戦略
地域課題の解決を加速するためには、企業にはどんな姿勢や戦略が必要だと考えますか?
柳瀬氏 : 人口減少の地域で持続的に事業を続けるためには、まず既存社員が誇りとやりがいを持って働ける環境が不可欠です。社訓「全進 善進 前進」のもと、全員が改善しながら善い方向へ前進する姿勢を持つこと、地域と社員と共に歩む経営方針を実践することが重要です。また、ICTを積極的に導入して労働集約型の業務を効率化し、経験と技術を次世代に継承する仕組みも必要です。女性や若手が活躍しやすい環境を整えることも人的資本経営の柱です。

常陽銀行のサポート
上記に関して、常陽銀行の連携が助けになっていることがあれば教えてください。
柳瀬氏 : 常陽銀行さんは、従業員満足度調査の企画・実施からレポート作成まで丁寧に伴走してくれました。調査結果をもとに伸ばすべき点と改善点を整理し、人事制度の再構築を進める際には常陽産業研究所から専門的なアドバイスを受けています。また、ESG経営を強化するための戦略投資に備えたポジティブ・インパクト・ファイナンス(PIF)の導入や金利CAPの設定、事業計画書策定における現状分析など、多方面からサポートしていただいています。銀行との協業が、人的資本経営を実現するうえで大きな力となっています。

未来への展望
次の時代に向け、御社が地域のために取り組んでいこうと考えていることを教えてください。
柳瀬氏 : 私たちはこれまで以上に地域と社員に寄り添った経営を実践したいと考えています。具体的には、ICT技術やドローン、3Dスキャナーなどを活用して作業の効率化を図り、安全と品質を両立させる現場づくりを進めます。若手技術者の育成と女性技術者の増員にも力を入れ、資格取得支援や柔軟な働き方をさらに推進します。災害予防・復旧の迅速化と地域インフラの長寿命化にも貢献し、地域No.1のインフラドクターとして期待され続ける企業を目指します。

最後に、これからの常陽銀行に期待することは何ですか?
柳瀬氏 : 常陽銀行さんには、今後も人的資本経営やESG経営に関する情報提供や専門家の紹介をお願いしたいです。地域企業のネットワークづくりや若手人材の採用支援、ICT導入のサポートなど、幅広い分野で伴走してもらえると心強いです。私たちは地域と社員と共に成長するため、銀行と手を携えながら課題に挑戦していきたいと考えています。
海老根建設株式会社様は、斜面と道路工事を一貫して行う稀有な存在として地域インフラを守りながら、社員の声に耳を傾ける人的資本経営へ舵を切っています。常陽銀行は、従業員満足度調査を起点に、働きやすい職場環境と持続的成長を両立させる新たな取り組みでこれからも伴走していきます。地域と社員と共に歩み続ける「インフラドクター」の挑戦は、未来へと続きます。
