
創業100年の事業と「感謝の心」
浜勘の事業内容と企業理念について教えてください。
海野氏 : 浜勘は創業100年を超える大洗町の老舗で、主力はカニの委託加工を中心とした水産加工です。製品の温度管理や凍結状態の調整、保存管理を徹底し、シュリンク包装技術で形と鮮度を長く保つことで差別化しています。経営理念に「感謝の心」を掲げ、顧客や従業員、地域社会など支えてくれるすべての人への感謝を商品に込めて健康で豊かな食生活への貢献を目指しています。自社の強みを活かしながら「蟹の浜勘」として知られる品質を守っていきます。

人材不足と地域活性化への挑戦
地元・大洗の課題解決にどのように取り組んでいますか?
海野氏 : 大洗町では人口減少に伴い人材確保が難しくなり、世代交代がうまく進まない企業も増えています。私は4代目として36歳で地元に戻り、家業を継ぎました。さんざん悩んだ挙句、家業を継ぐことを決めた分、覚悟は人一倍であると自負しています。当社の持続的成長ももちろんですが、将来的には、私の経験をもとに、地域企業の後進育成や世代交代のお手伝いもしたいと考えています。

事業基盤強化と収益向上に向けた具体策
事業基盤の強化と収益向上に向けた課題と対応策は?
海野氏 : 当社の生産現場は労働集約型であり、労働力人口の減少に対応するため生産性向上が急務です。常陽銀行さんから業務プロセスの可視化やIT・デジタル化に向けた現状分析を受け、労働集約的な工程の見直しを進めています。冷凍設備などへの投資による既存工場のキャパシティ拡大や、シニア雇用・専門人材の登用による人材強化、ECサイト拡充による売上増などを具体策として掲げています。

DX・IT導入による業務改革ビジョン
持続的な成長に向けて、今後はどのような取り組みを考えていますか?
海野氏 : 生産性向上のためにはDXが不可欠です。事務作業のデジタル化プロジェクトが進行しており、年内には完了予定です。引き続き自社店舗販売に注力する一方、自社ウェブサイトやECストアも整備し、オンライン販売にも力を入れています。

上記に関して、常陽銀行の伴走支援について教えてください。
海野氏 : 常陽銀行さんのIT・デジタル化に向けた現状分析と業務効率化支援が大きな助けとなっています。現場の作業や事務フローを可視化し、改善点を具体的に指摘していただいたことで、生産性向上の道筋が見えました。金融支援だけでなく、こうしたコンサルティングが社員の意識改革にもつながっており、DX推進の伴走パートナーとして心強く感じています。

新ブランドと冷凍寿司への取り組み
新たな自社ブランドと冷凍寿司などの新商品の狙いは?
海野氏 : これまでカニの委託加工を中心にしてきましたが、消費者に直接リーチする自社ブランドを確立することが必要と判断しました。そこで近年は「シーフードグラタン」「たらばがにシュリンク」「冷凍寿司」といった新商品に取り組み、最新設備で多種多様な冷凍・冷蔵食品加工を実現しています。自社ブランド商品の製造は、社員にとっても従来の委託製造とは異なるやりがいがあり、会社全体の活力になっています。品質管理体制は世界基準を目指し、安心・安全な商品の提供を常に心掛けています。

国内外の販路開拓や海外展開の計画は?
海野氏 : 国内では地場の魚を取り入れた商品を行政と共同開発し、新たな市場を開拓しています。海外では北米向けに冷凍寿司や国産タラバガニの輸出プロジェクトを進めており、アジア・中東圏からも引き合いが増えています。海外市場の開拓に際しては、常陽銀行さんから現地パートナーの紹介や公的支援制度の活用支援などを受けています。

地域の水産資源活用や環境対策への取り組みについてお聞かせください。
海野氏 : 大洗で揚がる海産物は非常に質が高く、常陸の国イセエビなど地元資源を広く世に届けたいと考えています。環境への配慮として、工場の屋根に太陽光発電設備を設置し、全照明をLEDに切り替えるなど省エネ対策を実施しています。廃棄物や食品ロスの抑制、排水の水質管理の徹底といった取り組みも行っており、地域の海岸清掃や地元食材を活用した商品開発を通じて地域貢献活動を積極的に進めています。こうした環境・地域への取り組みは、SDGsやESGの観点からも重要だと考えています。

未来への展望と常陽銀行への期待
今後のビジョンと常陽銀行への期待を教えてください。
海野氏 : 10年以内に売上高100億円を達成し、日本の水産加工業界における浜勘のプレゼンスを高めたいと考えています。そのためには現事業の強化と自社ブランドによる販路拡大の二本柱が欠かせません。常陽銀行さんには、資金調達や海外進出支援だけでなく、地域企業同士のマッチメイキングや事業承継支援など、地域経済全体を支えるコーディネーターとして期待しています。次の世代へバトンを渡すために、金融の枠を超えた伴走支援をこれからもお願いしたいと思います。

株式会社浜勘様は、感謝の心を軸に100年を超える歴史で培った技術と品質を守りながら、IT導入による業務改革に挑戦されています。常陽銀行はその歩みに伴走し、業務効率化と環境配慮の両立を支えながら、地域とともに持続的成長を目指す株式会社浜勘様の挑戦をこれからも後押ししてまいります。
