
先代から受け継ぐ、環境へのまなざし
どのような想いで、自動車リサイクル事業に取り組んでいらっしゃいますか?
島氏 : あらゆる業界に当てはまることではありますが、特に自動車業界では大量生産・大量消費の時代が長く続いてきました。そのため業界では新たな製品を作り出す「動脈産業」が発展してきたのですが、近年は環境への影響や資源の問題からリサイクルなどの「静脈産業」を伸ばしていこうと大きく変化している状況にあります。
そのなかでトラックや建設機械など、「はたらくクルマ」に特化してリサイクル事業を続けてきた当社だからこそ、培ってきた知見やノウハウを活かして社会が抱える課題を解決につなげていくことが企業としての責任、企業価値であると考えています。

もともと当社は、私の父がちり紙交換からスタートさせた会社です。時代の流れやニーズを汲み取り回収品を変化させてきたなかで、たどり着いたのが自動車という商材でした。限りある資源に価値を見出し大切に使い続ける、その意識は幼い頃から私に染みついており、青い地球を守るために何ができるかということは常に考えてきたことでもあります。

生まれ育った南相馬で、これからも
シマ商会は設立より福島県南相馬市を拠点として事業を展開されてきました。その歴史の中でも東日本大震災はとくに大きな出来事だったかと思います。リサイクル事業にはどのような影響がありましたか?
島氏 : まず原発からの距離の関係で、会社に通うことができなくなった社員が多くいて、約200名だった従業員数が半分にまで減少しました。また本社自体は津波の影響を受けなかったものの、倉庫内の3億円分の在庫が流され、そもそも地域人口も激減したことからリサイクルに必要な資源を回収するための市場自体が成り立たなくなりました。

これまでに経験したことのない事態に私自身もショックが大きく、部屋に3日間こもって今後のことを一人で考えました。この厳しい状況で、自分は、会社は何をすべきか。そうして決意したのは、従来の解体メインのリサイクル事業に留まるのではなく、車輌や部品の販売・輸出事業など、あえてさらに一歩踏み込んだ循環型社会のお手伝いを目指すことだったのです。

南相馬市で事業を続けることにこだわったのはなぜですか?
島氏 : 自分が生まれ育った地元に恩返ししたいという想いからです。実際、震災後に会社の方針が決まってからは、すぐ地元に10億円の新たな事業投資をしました。きっと周りの経営者からは「何考えているんだ」と思われていたと思いますよ。
でも当社が手がけるはたらくクルマのリサイクルに関する事業には広大な土地が必要であり、南相馬市にはそれを可能にする充分な土地がある。そして車輌を集め、運ぶ盤石な物流システムも日本には整っています。リスクがあることは承知でしたが、やり切れる自信があったんです。

サステナビリティ経営を取り入れ、レポート制作に至る
常陽銀行では、社内のプロジェクトチームとともに、10カ月にわたり、会社としての取り組みを整理し、サステナビリティ取組方針を策定。その後、KPIを設定し公表。そのアクションのひとつとして、南相馬市とも地域の課題を共有し、協業をはじめました。

島氏 : 制作に至ったのは、常陽銀行さんのご提案がきっかけでした。当社では主にコーポレートサイトで事業モデルについて掲載していたのですが、それらをESG経営という新たな視点で価値を見出していただき、対外的に発表する文書としてまとめることをお手伝いいただきました。

自分たちの取り組みが社会的にどれほど価値あるものかは、内側にいるとなかなか気づけないですし、さらにそれを整理して分かりやすく伝えようするのはとても難しいことです。そこを金融機関というプロの視点で丁寧に支援してくださり助かりました。経営上でも重要な社外への発信がスムーズに行えるようになり、確実に会社の成長を加速させてくれていると感じています。
正直に言うと、常陽銀行さんから提案を受ける面談前までは乗り気ではなかったんです。でも、提案資料を拝見して、サステナビリティ経営を取り入れることやサステナビリティレポートとして公表していくことに対しての考え方が変わりました。というのも当社のサイトを24時間ずっと見ていなければ書けないような提案内容が50ページにわたり網羅されていたからです。常陽銀行さんは私たちが地域にあるべき企業だと思ってくださっている。その熱意が伝わってきて、すぐにご協力いただくことを決めました。
サステナビリティ経営が成長を加速
持続可能な社会の実現に向けてさまざまな取り組みを続けてきたシマ商会は、それらの活動をまとめたサステナビリティレポートを発表されました。常陽銀行では、サステナビリティ経営の考え方を取り入れるところから、今般のレポートの制作までサポートさせていただきました。

今ある資源で「無限ループ」をつくる
今後の展望を教えてください。
島氏 : 2007年には南相馬市内にトータルリサイクル施設「ゆめ工場」を竣工し、解体からリサイクルパーツ・資源の生産までを一貫して手がけることが可能に。全国に展開する中古トラック販売店「グットラック!shima」の強みに加え、クルマに特化した一気通貫のサービス体制を確立しました。2023年にはトラックの架修架装・板金塗装を行う「グットラックshima付加価値工場」が完成し、いまある車輌の価値を引き出す事業も強化しています。


更に2025年には、ベトナムに現地法人を設立。当社が展開するサーキュラーエコノミーのシステムを国内だけでなく、さらに世界へとつなげようとしています。こうした多方面にわたる施策を着実に進めていった先で挑戦したいのは、より大きな視点で持続可能な社会の実現につなげていくための取り組みです。

とくに力を入れたいのは、更なる「動脈産業」への進出です。たとえば、エンジンなどの中古製品を当社がリビルドすれば、それを市場にまわすことがき、やがて下取り品として当社に戻ってきたものをさらにリビルドして市場にまわす無限ループをつくることができます。そうした動脈と静脈をつなげるような、新たなしくみをつくることが目標です。

売上目標で言うと、4年後の年商501億円の達成に向けて全社一丸となって努力を続けています。500億ではなく、あえて501億と設定したのは昭和50年に創業した父、島 一(はじめ)『50+1=501』への敬意から。自分にとってもより意味のある数字となり、二代目としてより会社を飛躍させていくという強い思いを持って日々目の前の業務に向き合っています。

最後に、常陽銀行に期待することを教えてください。
島氏 : 今、日本では多くの地域で人口減少が進み、地方に経済圏をつくれないということが大きな課題となっています。でも、地方にもキラリと光る会社や製品は必ずあるものです。大切なのは、それを地方という狭い商圏だけのものにせず、全国や世界といった広いフィールドで展開していくたしかな視点や戦略を持つことだと考えています。
そうした内と外をつなげていけるのが、地域で長く企業との信頼関係を築いてきた、そして金融機関として大きな視野を持って事業を展開している常陽銀行さんだと感じています。常陽銀行さんの活躍の先で地方創生の実現や、さらに日本全体が元気になることを期待しています。
