iDeCoとNISAの違いとは?それぞれ特長を理解して自分にあった商品を選ぼう

iDeCoとNISAの違いとは?

iDeCoとNISAとは?

 iDeCoは「個人型確定拠出年金」のことで、自分が拠出した掛金を自ら運用する私的年金制度です。この制度を利用することで将来の資産を築くことができます。一方、NISAは運用益が非課税となる制度です。少額からの投資が可能となるため、投資初心者でも始めやすい特徴があります。

 2023年末までは「つみたてNISA」と「一般NISA」の2つの枠から選択し、併用はできませんでした。しかし2024年1月に新NISA制度が導入され「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が始まり、これらの枠の併用が可能となりました。さらに、年間の投資上限額の拡大や非課税期間の無期限化など、多くの改善が実現された制度と言えます。

 通常、運用で得た利益に対しては20.315%の税金がかかるところを、iDeCoとNISAはどちらも非課税とすることで、より資産形成を始めやすいように国が推進する制度ですが、異なる点も存在します。

 iDeCoと新NISAの違いを、以下の表で見ていきましょう。

iDeCo 新NISA
(つみたて投資枠)
新NISA
(成長投資枠)
対象者 20歳以上65歳未満の方
(厚生年金加入者または国民年金任意加入被保険者)
その他の方は20歳以上60歳未満
18歳以上 18歳以上
年間投資
上限額
14万4,000円~81万6,000円
  • 公的年金の加入状況によって異なる
120万円 240万円
投資対象
商品
  • 定期預金
  • 保険商品
  • 投資信託
長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
  • 上場株式
  • 投資信託
  • ETF 
    など
非課税期間 受け取り開始まで
  • 受け取り開始年齢は60~75歳の間で選択可能
無期限 無期限
新規に投資できる期間 65歳未満 無期限
(恒久化)
無期限
(恒久化)
資金の
引き出し
原則60歳まで不可 いつでも
可能
いつでも
可能
手数料
  • 信託報酬など金融商品に関わるものを除く
<国民年金基金の手数料>
  • 初回掛金引き落とし時:2,829円
  • 国民年金基金連合会手数料:月額105円
  • 資産管理手数料:月額66円
<金融機関等の手数料>
  • 無料~月数百円(金融機関で異なる)
無料 無料
税制優遇
  • 掛金:全額所得控除
  • 運用益:非課税
  • 受取時:退職所得、公的年金等控除
運用益:非課税 運用益:非課税
月額 5,000円~
1,000円単位で設定可能
1,000円以上~
1,000円単位で設定可能
  • 金融機関ごとに異なる
1,000円以上~
1,000円単位で設定可能
  • 金融機関ごとに異なる

 このようにiDeCoと、新NISAの「つみたて投資枠」と「成長投資枠」では異なる点が多くあるため、加入前に理解しておくことが大切です。

iDeCoの特長

 iDeCoの特長や、得られるメリットについて解説していきます。

節税効果がある

 iDeCoの大きなメリットは、積立時、運用時、受取時にそれぞれ税制優遇を受けられることです。具体的に得られる節税効果を以下で説明します。

掛金が全額所得控除になる

 iDeCoでは掛金が全額所得控除の対象となるため、所得税と住民税の節税につながります。例えば毎月の掛金が1万円であり、所得税を20%、住民税を10%とした場合は、年間の税金を3.6万円軽減できる仕組みです。

 ただし、所得控除のために必要な手続きは、iDeCoの加入区分や掛金の振り込み方法によって異なるので、事前によく確認しましょう。

運用益が非課税で再投資される

 通常、金融商品の運用益には20.315%の税金がかかりますが、iDeCoでは運用益にかかる税金が非課税です。iDeCoは老後資金のお金の準備なので、長期での運用となることが多く、運用益が非課税になることによる効果が大きくなります。

受取時も控除対象として扱われる

 資産を受け取るときに、その方法に応じて給付金から一定額控除されるのもiDeCoの特長です。受け取り方法は年金か一時金を選択することができ、年金なら「公的年金等控除」、一時金なら「退職所得控除」の対象として扱われます。

 他の退職所得や公的年金と合算し、一定額までを非課税で受け取ることで、大きな非課税メリットを受けられるでしょう。

老後資金として貯めるのに適している

 iDeCoは加入者の種別等に関わらず、月5,000円以上、1,000円単位の掛金設定で始められるのが魅力です。まとまった資金がなくても、自分のライフスタイルに合わせて無理なく老後資金を蓄えられます。

 また、60歳まで引き出せないことがデメリットに思われがちですが、途中で引き出せないからこそ老後資金を確実に準備することができます。

 これらの内容は厚生労働省が発行しているiDeCoのパンフレットで詳しく紹介されています。

NISAの特長

 ここでは、2024年1月にスタートした新NISAの中でも、iDeCoと比較されやすい「つみたて投資枠」について、どのような特長があるのか、以下で解説していきます。

少ない金額から始められる

 「つみたて投資枠」は、以前のつみたてNISAと同様、一定金額を毎月定期的に積み立てる「積立投資」を対象とし、少額から始められます。このため、投資初心者でも気軽に始めやすいと言えるでしょう。

 金融機関により金額に差はありますが、生活に無理のない範囲で投資しながら資産形成ができます。積立金額の変更にも対応しており、少額から始めて、家計に余裕が出てきたら少しずつ金額を増やすという方法も可能です。

運用益と分配金が非課税になる

 前述したように一般的な投資の場合、運用益や分配金は課税対象となりますが、「つみたて投資枠」で投資した場合は無期限で非課税での運用ができます。

 以前のつみたてNISAでは20年間だった非課税期間が、新NISAの導入で無期限に変更された点は大きなメリットだと言えるでしょう。

リスクを抑えた運用ができる

 投資でのリスクを抑えられるのも、つみたて投資枠の特長です。金融商品は常に価格が変動するので、一気に買い付けたタイミングが結果的に高値であった場合、大きな損をしてしまう恐れがあります。

 つみたて投資枠は、商品の値動きに関わらず毎月一定額を購入することができます。価格が低い時には多くの量(口数)を、高い時には少ない量(口数)を購入することになるため、平均買付単価を抑えられます。買いのタイミングを見極める必要がないため、投資経験のない初心者にもおススメです。

年間投資枠が大きい

 新NISAの「つみたて投資枠」の年間投資上限額は120万円となり、以前のつみたてNISAの40万円と比較して、3倍の金額と大幅に増加しています。この金額内での投資額に対する運用益が非課税となります。

 加えて、新NISAでは上場株式にも投資できる「成長投資枠」との併用が可能です。「成長投資枠」では積み立てや一括購入で年間240万円までの投資ができます。つまり、新NISAでは「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの枠を組み合わせることで、年間最大360万円まで非課税で投資できるのです。

 年間の上限額の他に、生涯非課税限度額として1,800万円までが非課税で投資できます。また、新NISAで購入した商品を売却した場合、その商品を購入した時の価額分だけ非課税保有限度額が復活して、翌年以降枠を再利用することもできます。つまり、無理して年間の上限額を全て利用する必要はないということです。投資に無理は禁物ですので、家計に支障をきたさない範囲で、かしこく資産運用していきましょう。

運用に関するiDeCoとNISAの違い

 それぞれに特長のあるiDeCoとNISAですが、運用に際してはどのような違いがあるのでしょうか。

 ここからは、双方の違いをポイントごとに比較しながら説明していきます。

目的の違い

 そもそもの前提として、資産運用の目的の違いが挙げられます。iDeCoはあくまで老後資金のために作られた税制優遇制度なので、特別な理由がない限りは60歳以降でなければ受け取りができません。老後の資金を着実に貯めることが目的ならiDeCoがぴったりですが、60歳以前に必要な資金作りには不向きでしょう。

 一方のNISAは、好きな時に解約できるため、目的を自由に設定しながら投資が行えます。2024年からは非課税期間が無期限となったため、老後資金の準備など長期的な投資として活用したり、子どもの進学や住宅購入などのライフイベントに向けた資金の準備に活用したりと、柔軟に投資することができます。

 他にも、急な入用でまとまった資金が必要になった時は、運用しながら一部だけ取り崩すことが可能な点もNISAのメリットです。

運用する金融商品の違い

 iDeCoでは、元本確保型の定期預金や保険商品と、元本変動型の投資信託が選択可能です。「長期」「積立」「分散」の観点から、リスクを抑えつつ投資できる仕組みが整えられています。

 とはいえ商品の組み合わせを決めるのは加入者自身です。元本割れを抑えたい場合は定期預金や保険を選び、高いリターンを求める場合は、リスクを伴うものの投資信託を中心に選ぶこともできます。このようにiDeCoは重視するポイントに応じた運用が可能です。

 NISAの中でもつみたて投資枠の商品は、要件を満たして金融庁に届け出された公募株式投資信託と、上場株式投資信託(ETF)で構成されています。定期預金や保険などの元本確保型商品は選べないものの、運用次第で収益をあげられるのがメリットです。投資信託にかかる信託報酬(運用管理費用)を抑えた商品や、販売手数料がかからない商品に限定されているため、コストやリスクを抑えながら運用が行えます。

 成長投資枠では投資信託はもちろん、上場株式などにも投資できる幅広さが魅力です。

運用できる期間の違い

 iDeCoは、原則として20歳〜64歳までなら加入できます。

 20代のうちから老後を見据えて資金を蓄えたい方はもちろん、60歳以降も会社員・公務員として働く方や、60歳以降に国民年金へ任意加入する方も、非課税での投資が続けられます。NISAの場合は年齢上限がなく、国内に住んでいる18歳以上の人であれば利用が可能です。

 なおNISA制度では、その年の1月1日が年齢の基準日と定められています。具体的には、1月1日生まれの人は18歳の誕生日からNISA口座を開設できます。一方、それ以降の生まれの方は、18歳になった次の年の1月1日からの開設が可能です。ただし、実際に取引が始まるのは各金融機関の1月の初営業日からとなります。

投資できる金額の違い

 次に、運用が始められる金額と、年間運用額の上限の違いについて解説しましょう。

最低金額の違い

 iDeCoの最低金額は5,000円と定められており、それ以上の掛金は1,000円単位で設定できる仕組みです。金融機関による差はなく、どこで加入する場合も月5,000円以上の予算を立てる必要があります。

 対して、NISAには最低金額は金融機関ごとに異なり、100円から運用を始められるところもあります。開始時点で十分な資金がない場合や投資初心者でも、気軽に始めることができるでしょう。

 ただし投資金額が小さければ、その分得られる非課税メリットも少なくなります。ある程度資金を増やすことが目的なら、家計や収入の状況を見つつ徐々に積立金額を増やしていくのがおススメです。

年間運用額の上限の違い

 iDeCoの年間拠出限度額の上限は一律ではなく、加入区分によって異なります。

 第1号被保険者にあたる自営業者の上限が最も高く、国民年金基金と国民年金付加保険料も含め、年額81.6万円までの拠出が可能です。

 第2号被保険者に分類される会社員・公務員は、企業型DCへの加入の有無などによってさらに条件が分かれており、年額上限14.4~27.6万円で拠出できます。

 第3号被保険者とされる専業主婦(夫)は、上限が年額27.6万円と決められています。加入を検討する時点で、自分がどの区分に属するかを確認するようにしましょう。

 NISAは運用上限額の個人差がなく、非課税で運用できる金額はつみたて投資枠が年間120万円、成長投資枠が年間240万円の計360万円で固定されています。職種によらずフラットな投資ができるので、転職などライフプランに変化がある場合も柔軟な対応が可能です。

加入条件に関するiDeCoとNISA

 iDeCoへの加入には、年齢以外の条件が存在します。以下の8つに当てはまる人は、iDeCoに加入できません。

  • 国民年金保険料を免税されている人(一部免除を含む)
  • 国民年金保険料が未納の人
  • 厚生年金被保険者ではない60歳以上で国民年金に任意加入していない人
  • 国民年金の任意加入をしていない海外居住の人
  • 農業者年金に加入している人
  • iDeCoの老齢給付金を受給している、または受給歴がある人
  • 老齢基礎年金を繰上げ受給している人
  • 企業型確定拠出年金でマッチング拠出をしている人

 一方NISAは18歳以上であれば、特別な条件がなく、誰でも始められる制度です。加入や利用をする際は、上記の条件を確認し、自分の状況と照らし合わせて検討すると良いでしょう。

税金に関する違い

 iDeCoでは、拠出分の全額所得控除と運用益の非課税に加え、受け取るときには受け取り方法によって退職所得控除もしくは公的年金等控除が適用されます。

 掛金の払い込み、運用、受け取りまでの長い期間、税金の軽減ができるのが強みです。一方でNISAは、商品の運用益のみが非課税となります。投資した金額分が所得税・住民税の控除対象とはならないため、節税の観点だけ見ればiDeCoのほうがよりメリットを得られるでしょう。

iDeCoとNISAはどんな人におススメ?

iDeCoがおススメ NISAがおススメ
  • 老後資金を確実に準備したい人
  • 毎月ある程度の額を支払う余裕がある人
  • 売却への自由さを求める人
  • 目的をもって資金の貯蓄を目指す人
  • 投資のコスト・リスクを抑えたい初心者

 ここではiDeCoとNISAが実際にどんな人に向いているのかを解説します。

iDeCoはこんな人におススメ

 資産を60歳まで引き出せないので、老後資金を確実に準備したい人におススメです。中長期的な資金の確保だけではなく、さまざまな節税効果を得ながら効率的かつ長期的な資産運用を図るのにぴったりでしょう。

 また、iDeCoは月5,000円以上の掛金が必要なので、毎月ある程度の額を支払う余裕がある人に適しています。掛金の変更も年1回までと決められているため、投資のための資金を確保しつつ、先々の投資金額を慎重に見極める必要があります。

 常陽銀行では、個人型確定拠出年金の制度メリットを確認できるシミュレーションを行うことができます。参考情報として活用するのがおススメです。

個人型確定拠出年金(iDeCo)
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NISAはこんな人におススメ

 NISAは運用期間に制限が設けられていないため、いつでも引き出しが可能です。この特徴から、いつでも引き出せる安心感を求める人、目的をもって資金の貯蓄を目指す人におススメと言えます。

 以前のNISAでは、運用期間が5年または20年と定められておりましたが、運用期間が無期限に拡大されたことで、さまざまな年齢層で長期的な運用を視野にいれて投資できるようになりました。このようにNISAは、以前のNISAと比較して、多様な目的に合わせた資産形成が可能なため、多くの人におススメな投資と言えます。

 金融機関によっては100円から始められたり、つみたて投資枠では特にコスト・リスクを抑えた投資も可能なため、初心者にもおススメです。徐々に投資に慣れながら、積立金額や運用商品の変更を任意のタイミングで行うことで、ライフプランに沿った資産運用が叶うでしょう。

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iDeCoとNISAの併用もおススメ

 さらに効率の良い資産運用を目指すなら、iDeCoとNISAを併用するのも1つの手です。iDeCoで掛金の全額所得控除を受けて節税しつつ、浮いた分をNISAに回し運用することもできます。さらに60歳まで引き出せないiDeCoのデメリットを、いつでも引き出せるNISAで補えるため、急に資金が必要になっても慌てる必要がありません。

まとめ

 本記事では、iDeCoとNISAの違いと、それぞれで得られるメリットについて解説してきました。どちらにも運用益が非課税になるメリットがありますが、対象となる商品や限度額、控除の種類が異なるので、違いを理解して選ぶことが大切です。

 併用も視野に入れながら、自分のライフスタイルや目的に合う制度を利用しましょう。

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(2024年1月4日)

本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
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以 上

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