


企業のDNAを可視化せよ。
地域に根付く2社だから編み出せた物語。

上場企業にとって、IRを通じて自社の情報を発信し、ステークホルダーから理解を深めてもらうための活動は重要な取り組みの1つです。しかし、財務情報以外の「会社の想い・魅力」を言語化して伝えきることは難しいケースも。今回は、地元・茨城県を代表する上場企業である株式会社ジョイフル本田さまのお悩みに寄り添い、初めての統合報告書の作成に伴走したプロジェクトについてご紹介します。

川村 晋一 コンサルティング営業部 リサーチ&コンサルティンググループ 次長 2004年入行 経済学部卒

廣田 巧 土浦支店 営業第一課 支店長代理 2008年入行 法学部卒
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久保 裕彦さま 株式会社ジョイフル本田 管理本部副本部長 兼 経営管理部部長 兼 広報・IR部部長
※所属部署はインタビュー当時のものです
プロジェクトの背景
プロジェクトの背景にはどんな課題がありましたか?

久保さま
ジョイフル本田は、関東圏内で大規模なホームセンターを運営する上場企業です。そんな私たちにとって、IR資料の「統合報告書」を作成する必要性は、実は何年も前から認識されていたこと。上場して社会からの注目度が上がるにつれて「ジョイフル本田の価値を体系的に発信するツールがない」というギャップに気づき始めたのです。会社案内や個別の資料は用意していたものの、それらはあくまでも“点”に過ぎない。ステークホルダーがジョイフル本田の全体像をつかむには、点を線にし、さらには面にする資料が不可欠でした。ところが、当社にはそのような統合報告書をつくった経験がない。どこから手をつければいいのか、まったくイメージできなかったんです。
廣田
私はジョイフル本田さまの営業担当者として、日頃から財務部門の方とやりとりをさせていただいていました。その会話のなかで統合報告書に関するお悩みを耳にしたことが始まりです。これは単純な資料作りではなく、ジョイフル本田さまの思想を言語化する一大プロジェクト。そう理解した瞬間、常陽銀行としてぜひサポートさせていただきたいと強く感じました。そこでまずは、本部の専門部署であるコンサルティング営業部に相談し、川村さんとともにご提案の準備を始めました。
川村
私から見ても、ジョイフル本田さまは「語るべき価値が豊富な企業」でした。創業者の哲学、独自の品揃え、他に類を見ない巨大店舗の運営、地域への根ざし方……。どれも非常にユニークで、奥が深い。逆に言えば、これだけ豊富なストーリーをどの順番で、どの深さで見せるのかが難しい。だからこそ、それらを客観的に理解しやすい形にまとめた統合報告書の必要性を強く感じました。ただ、もし私たちがその作成を支援することができた際には、価値の棚卸しだけでも相当大変な大仕事になるだろうとも感じていました。
久保さま
そういう意味で、最初の対話は“何を作るか”というより、“なぜ作れずにいたのか”の共有から始まりましたね。ともすれば外部の方には伝えにくいような話でも、廣田さんと川村さんはそれをしっかり受け止めてくれた。「常陽さんとなら前に進めるかもしれない」という手応えを確実に感じていました。
川村
私自身も茨城県で暮らすなかで、ジョイフル本田さんの「すごみ」を肌感覚で理解していたことが大きかったのかもしれません。東京ドーム5個分を超える広大な敷地を誇る「ニューポートひたちなか店」に代表される店舗のあり方、その背景にある「効率や利益よりも、まずお客さまの喜び」という確固たる理念。それを伝えられるのは、同じ茨城県で歴史を築いてきた常陽銀行しかいないと感じていました。
廣田
そうですね。ジョイフル本田さまならではの「想い」や「歴史」を外部に発信し、さらには次の時代に向けてのバイブルとなるような統合報告書の作成をお手伝いしたい。そんな想いから、「絶対にパートナーの座を勝ち取るぞ」という意気込みでご提案に臨みました。
プロジェクトのスタート
何が決め手となって常陽銀行がパートナーに選ばれたのでしょう?

久保さま
常陽銀行さんと並行して、合計4社にご相談しました。なかには大手コンサルファームやメガバンクも。そんななかで常陽銀行さんには、他社にはない一体感と熱量がありました。特に川村さんの事前のインプット量は圧巻でしたね。創業者のエピソードまで深く理解していて、私ですら把握していないことを知っているほど(笑)。「そこまで調べたんですか?」と驚いてしまいました。その姿勢に、「常陽銀行さんと一緒なら、長年の課題を解決できる」という確信を持ちました。
廣田
正直に言えば、当行としても上場企業の統合報告書の作成支援は初めての挑戦で、「私たちにできるだろうか」という不安もありました。けれど、地元・茨城県を代表する企業さまの大きな転機に関わらせてもらえる。これは地域を支える金融機関として、絶対に逃せない機会だと思いました。
川村
地元企業との関係性は、私たちの強みですね。「分からない」と素直に言ってもらえる状況があるからこそ、一緒に悩んで、一緒に前に進める。そこは大手との違いだったのかもしれません。
久保さま
そうですね。実際に今回のプロジェクトに携わるなかで、「分からない」と正直に言える関係は非常に大切だと実感しました。専門家に頼むと、どこかで「こちらも分かったふりをしなきゃ」となる。でも、常陽銀行さんには「分からないことがあっても素直に言っていい空気」がありました。加えて、費用面でも誠実でした。英文翻訳まで含めたトータル提案の費用感にも驚きましたね。
川村
今回のサポート単体で見ると、正直に言ってそこまでたくさんの利益はありません(笑)。けれど、これを機にジョイフル本田さまとのリレーションをさらに深めて、より幅広くサポートさせていただける関係性を構築することが私たちにとって何より重要でした。茨城に根付く2社が「お互いを支え合いながら地域の活性化に貢献する」、そんな未来に向けて、重要な一歩を踏み出せたと感じていました。
廣田
今回のパートナーに常陽銀行が選ばれたと聞いた瞬間、「よし!」という喜びと同時に、「必ず成功させなければ」というプレッシャーも感じましたね。ここからは「お客さまの期待を越えるしかない」と腹を括りました。
実際の取り組み
プロジェクトはどのような取り組みからスタートしましたか?

川村
実際に動き始めて最初の数ヶ月間は、とにかく徹底的に聞く時間でした。財務、IR、管理、リスク、各事業部……。ほぼ全部署の方からお話をうかがい、部長クラスの方々と一時間単位で話し込みましたね。そのなかで、一人ひとりの言葉の端々に創業者の思想がにじんでいることが分かりました。部署ごとに異なる言葉・別の角度から語られる“同じ価値観”。それをどう一冊に統合するか。ヒアリングの質で報告書の構造が決まると考えて、徹底的に傾聴を重ねました。
久保さま
私たちも、話しながら気づくことが多かったです。「うちの会社ってこう捉えられるのか」とか、「このエピソードはそこにつながるのか」など。外部の方の視点を通すことで、それまで当たり前だと思っていた文化が言語化されていく。この体験は私たちにとって非常に大きな発見でした。
廣田
私は営業店サイドから、ヒアリングでは拾いきれない“現場感のある声”を掬い上げることを意識していました。川村さんと行ったヒアリングとはまた別の面談でも、お客さまとの会話に出てきた小さな疑問やコメントを見逃さず、本部へ即共有。制作側と現場側の温度差が出ないよう、常に「翻訳係」でいるような感覚でしたね。
川村
ヒアリングや打ち合わせは必ず対面で行うようにしていました。常陽銀行本部がある水戸からジョイフル本田さまの本社がある土浦までは車で一時間ほどかかる距離。決して近いとは言えませんが、私はどうしてもリアルでお話を伺いたかった。オンラインでは伝わらないニュアンスがあるし、会社の空気も感じられない。会議室での雑談や、オフィスの雰囲気すら重要なヒントになると考えていたので。
久保さま
その姿勢は本当にありがたかったです。私たちがうまく言語化できない部分を掬い上げてもらえたのは、やっぱり実際に会って対話を重ねたからだと感じています。それに、このプロジェクトに「熱」があったのは、川村さんたちが足を運んでくれる姿勢があったからだと思います。
プロジェクトの難所とやりがい
プロジェクトを進めるなかでは、どのようなハードルがありましたか?

久保さま
当社が取り組む重要課題(マテリアリティ)を言語化する作業は最大の難所でした。会社としての基本方針は既にあったものの、統合報告書にそのまま記すには弱いとも感じていて。整理し直す必要があったけれど、自社だけでは手をつけられませんでした。そこを常陽銀行さんがゼロから組み立ててくれたことは、今でも感謝しています。
川村
そこは私たちにとってもなかなか苦しい作業でした(笑)。施策は存在する。方針も存在する。けれど、“どの施策がどの価値観に紐づくのか”が明確に構造化されていない。そこを一つずつ丁寧に聞き取り、整理し、ストーリーとして再構築する。それを正確にやらないと、会社の価値の軸が歪んで伝わってしまう。だからこそ慎重に進めました。
久保さま
川村さんが持ってきてくれたマテリアリティの案を見た時、「あ、これが私たちの会社の精神だ」と自然に腹落ちしました。経営陣の反応も良くて、「ここまで言語化されるのか」と驚いていましたね。
川村
完成の瞬間はただただ嬉しかったです。“間違いなく良いものができた”という実感がありました。けれど、私たちの熱量が入り過ぎたあまり、想定よりも情報量が多くなってしまいましたね(笑)。上司や行内の広報部署、外部の有識者、そして、過去に同じテーマでご支援した他社の会長さまなど、さまざまな方の応援を受けて形にすることができました。
廣田
ジョイフル本田さまのたくさんの魅力や文化を言語化できたことにホッとしました。川村さんが主体になって進めた統合報告書づくりと並行して、私の方ではサステナブルファイナンスの支援も進めていました。非財務の取り組みを金融支援で後押ししながら、さらに報告書でも見える化する。この二つが融合していくプロセスは、銀行員としても貴重な経験でした。
プロジェクトの成果と社会的価値
統合報告書をリリースしてから、どんな変化がありましたか?

久保さま
まず大きかったのは、外部評価機関によるESG格付※がAからAAに上がったことです。統合報告書だけが理由ではないかもしれませんが、非財務情報の可視化は間違いなく評価につながったと感じています。また、投資家との1on1でも、「統合報告書を読んで理解した上での質問」が増え、対話の質が一層深まりました。説明の時間が短くても、相互理解が早い。これは大きな変化です。
川村
統合報告書は企業と社会をつなぐ「翻訳装置」です。内部にある価値を、外部のステークホルダーへ正しく伝えることは、投資、人材、協業など、未来への資源を呼び込む重要な力になるはず。そのきっかけをつくる支援ができたことは、地方銀行としての価値に直結していると感じます。
廣田
そして今回のプロジェクトを起点に、ジョイフル本田さまのさまざまな部門や新規事業開発においても、常陽銀行との接点が広がっています。これは「レポートをつくったから終わり」ではなく、「ビジネスパートナーとしての関係が深まった結果」として生まれた変化だと思っています。
久保さま
そうですね。実際に統合報告書が完成したあとも、常陽銀行さんにはいろいろなご相談をさせてもらっています。資本効率、新規事業、営業改革など、多岐にわたる課題に対して、必ず解決の糸口を示してくれる。この「相談すれば必ず何か返ってくる感覚」は、本当に頼もしいです。
川村
私たちにとっても、ジョイフル本田さまという企業を深く理解し、ともに課題解決に取り組めた実り多いプロジェクトでした。この経験が、地域のほかの企業の支援にも必ず活きると感じています。
久保さま
プロジェクトの始まりから今まで、「頼れるパートナー」という印象は変わりません。これからも当社や地域企業のチャレンジを力強く支えてほしいですね。
※ESG格付:企業が「環境(E)・社会(S)・ガバナンス(G)」の分野で、どれだけ長期的リスクに対応し、持続可能性を高める活動をしているかを専門機関が評価・数値化した指標



常陽銀行では、本件に限らず、さまざまなお客さまの支援に取組んでいます。
そして、そのなかには、今回のように当行として初めての取組みであっても、
担当者の熱意・想いがあれば、必ず実現できます。
常陽銀行は、みなさんの熱意・想いを叶える場所でありたい。


