NISAで投資信託を始めよう!非課税制度の内容や商品の選び方を解説

NISAで投資信託を始めよう!

 投資信託は、投資家から集めた資金を1つにまとめて、専門家が代わりに投資・運用する仕組みの商品です。資金の投資先の価格が上昇しているときに売却すると利益が得られ、商品によっては分配金を受け取れるものもあります。

 NISAで投資信託を運用すると、本来であれば税金がかかる分配金や売却益が非課税となるため、より多くの利益を手元に残せます。

 この記事では、これから投資信託を始める方に向けて、NISAの種類やそれぞれのメリットとデメリットを解説します。

NISA口座で投資信託は買える!運用益は非課税に

 NISA(少額投資非課税制度)は、少額からの投資を支援するための税制優遇制度です。

 通常、金融商品から得られる配当金や分配金、売却益(譲渡益)などの利益には、約20%の税金がかかります。しかし金融商品をNISA口座で取引するのであれば、税金はかかりません。

 NISAの利用者数は、年々増えています。日本証券業協会によると、NISAの口座開設数は、2014年末の514万口座から、2023年6月末には1,290万口座と2倍以上に増加しました。

 NISAの対象商品には、投資信託が含まれています。特に、NISAの一種である「つみたて投資枠」の対象商品は投資信託のみです。投資信託で資産形成を始めようと考えている方は、NISAの活用をおススメします。

NISAの種類とは?2024年1月から始まった新制度の内容を解説

 NISAには、2024年1月から始まった新制度と、2023年末までの旧制度の2種類があります。新しいNISAと旧NISAでは、1年間で投資できる金額(年間投資枠)や商品を非課税で保有・運用できる期間(非課税保有期間)などが異なります。

 まずは、新しいNISAの年間投資枠や非課税保有限度額をみていきましょう。

成長投資枠 つみたて投資枠
年間投資枠 240万円 120万円
非課税保有期間 無期限化
非課税保有限度額 1,800万円
(うち、成長投資枠1,200万円)
口座開設期間 恒久化
投資対象商品 上場株式・投資信託など※ 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
(旧制度のつみたてNISAと同様)
対象年齢 18歳以上
  • ①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託は除外

 新しいNISAには「成長投資枠」と「つみたて投資枠」という2種類の制度があります。成長投資枠とつみたて投資枠は併用が認められているため、年間で最大360万円まで新規投資できます。

 一方の旧制度は2023年で新規買付は終了となりましたが、成長投資枠の前身である「一般NISA」や、つみたて投資枠の前身である「つみたてNISA」、そして未成年者を対象にした「ジュニアNISA」の3種類があります。制度内容は、以下の通りです。

一般NISA つみたてNISA ジュニアNISA
年間投資枠 120万円 40万円 80万円
非課税保有期間 5年間 20年間 5年間※
非課税保有限度額 600万円 800万円 400万円
口座開設期間 2023年まで
投資対象商品 上場株式や投資信託など 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式や投資信託など
対象年齢 18歳以上 18歳未満
  • 2024年以降は5年間または18歳になるまで。
    • 非課税保有期間終了前に18歳を迎えた場合でも、現行制度通り5年間は非課税で保有することが可能。
    • 18歳になる前に非課税保有期間が終了した場合は、自動的に継続管理勘定に移管され、18歳になるまで非課税で保有することが可能。

 旧制度では一般NISAとつみたてNISAは同一年での併用ができないため、NISAを始めるときはどちらか1種類を選ぶ必要がありました。新制度ではこれらの併用が可能となり、より活用しやすくなりました。次の項目では、NISAの非課税枠の種類ごとに、特徴を紹介していきます。

一般NISA・成長投資枠

 一般NISAは、2014年1月に始まった最初のNISA制度です。18歳(※1)以上が対象であり、年間最大120万円(※2)までの新規投資に対する利益が非課税になるというもので、非課税期間は最長5年、非課税投資枠は最大600万円です。

  • 2022年3月31日以前は20歳
  • 2015年以前分は100万円

 一般NISAの役割を引き継ぐ現行の成長投資枠では、年間240万円まで金融商品に新規投資でき、非課税保有期間は無期限に延長されました。非課税保有限度額は、つみたて投資枠とあわせて1,800万円ですが、うち成長投資枠は1,200万円が上限となります。

 一般NISAと成長投資枠は、一括投資と積立投資のどちらも可能であるため、希望するタイミングや頻度で金融商品を購入しやすいと言えます。

 一般NISAで投資できる金融商品は、株式投資信託、国内・海外上場株式、国内・海外ETF、ETN(上場投資証券)、国内・海外REIT、新株予約権付社債(ワラント債)でした※が、成長投資枠では一部制限が加わります。成長投資枠では、整理・監理銘柄や、信託期間20年未満、高レバレッジ型・毎月分配型の投資信託やデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等は投資対象から除外されることとなりました。

  • 実際に購入できる金融商品は金融機関によって異なります。

つみたてNISA・つみたて投資枠

 つみたてNISAは、少額からの長期積立と分散投資に特化した非課税制度として2018年1月にスタートしました。一般NISAと同じく対象は18歳以上で、年間投資枠は最大40万円、非課税保有期間は最長20年、非課税投資枠は最大800万円です。

 つみたてNISAの役割を引き継ぐ現行のつみたて投資枠では、年間投資枠が最大120万円に増額されています。非課税保有期間は成長投資枠と同様に無期限です。非課税保有限度額は成長投資枠とあわせて1,800万円であり、つみたて投資枠のみで使い切ることも可能です。

 つみたてNISAとつみたて投資枠は、少額からの積立投資が可能で、長期にわたる資産形成に向いています。対象の金融商品は、金融庁が定める基準をクリアし、長期・積立・分散投資に適している公募株式投資信託と上場株式投資信託(ETF)です。

 商品数が厳選されているため、投資信託の初心者でも商品を選びやすいと言えるでしょう。ただし、金融庁の基準を満たしていない投資信託や個別の株式などには投資できません。

ジュニアNISA

 子どもの将来に向けた資金づくりを目的として、2016年1月から始まったのが「ジュニアNISA」です。新制度では「ジュニアNISA」を引き継ぐ内容はなく、2023年で口座開設・買い付けは終了しました。

 ジュニアNISAは他のNISAと違って利用対象者は未成年のため、口座開設や実際の運用は口座名義人である子どもの両親や祖父母など2親等以内の親族が行うケースがほとんどです。

 非課税となる投資上限金額は毎年80万円、非課税期間は最長5年、非課税投資枠は最大400万円です。運用商品や投資方法は一般NISAと同じです。

 当初、名義人が18歳(高校3年生の1月以降)になるまでは投資した資産を現金で引き出せず、途中で払い出しをした場合は過去に非課税となった利益が課税される仕組みでした。しかし、2023年末で新規買い付けが終了し、2024年以降は18歳になるまでいつでも非課税での払い出しが可能となりました。

NISAで投資信託を運用するメリット

NISAで投資信託を運用するメリット

 ここでは、NISAで投資信託を運用するメリットを1つずつ解説します。

非課税で運用できる

 投資信託の運用で得た分配金や売却益には、通常であれば約20%の税金がかかります。

 例えば、投資信託を購入した3年後に売却をして20万円の売却益が出たとしましょう。通常、特定口座や一般口座で商品を保有していた場合、約4万円の税金がかかります。

 しかし、NISA口座で投資信託を購入し、非課税保有期間中に売却したのであれば、4万円の税金がかからず20万円の利益がすべて手元にのこります。

少額から投資ができる

 日本国内の株式に投資をする場合、100株1単元ごとの取引となるため、銘柄によっては数十万円や数百万円の資金が必要となります。また、投資する金額が大きいと発生する損失の規模も大きくなってしまうかもしれません。

 その点、投資信託であれば、商品によっては1,000円や1万円などの少額から投資をすることが可能です。

 投資金額が少ないのであれば、損失が発生したとしても小規模で済みます。多額の資金を投資することに抵抗がある人でも、投資信託であれば始めやすいでしょう。

運用をプロに任せられる

 投資信託は、投資家から集めた資金をまとめて、商品(ファンド)の運用方針にしたがって、国内・国外の株式や債券などに投資する仕組みです。投資先を選ぶのは専門家で、運用のプロです。

 株式や債券などの個別銘柄を選ぶためには、経済や金融などさまざまな専門知識が求められます。仕事や子育てなどで忙しいなか、投資判断をするために必要な知識を身につけるのは難しいかもしれません。

 投資信託であれば、投資先の選定などの投資判断をすべて運用のプロに任せることができます。投資の知識にあまり自信がなく、どの銘柄に投資をすれば良いか分からない方は、まずは投資信託から始めると良いでしょう。

分散投資がしやすい

 投資には「卵を1つのカゴに盛るな」という格言があります。これは、投資では特定の商品に集中投資をするのではなく、複数の商品に投資をしてリスクを分散させたほうが良いということを示しています。

 投資先を分散すると、1つの投資先が値下がりしても、他の投資先の価格が上昇していれば、保有資産の減少をカバーすることが可能です。

 とはいえ、株式や債券などを複数保有するためには多額の資金が必要であるため、初心者が個別銘柄に分散投資をするのは現実的ではないでしょう。

 投資信託は、投資家から少しずつお金を集め、それを1つにまとめてさまざまな資産に投資する仕組みであるため、少ない金額から分散投資ができます。

成長投資枠とつみたて投資枠を選ぶときの基準は?

 2023年までのNISAでは、一般NISAまたはつみたてNISAのどちらかしか利用できなかったのが、新しいNISAでは成長投資枠とつみたて投資枠の両方を利用することができるようになりました。では、どちらを優先して選べば良いのでしょうか。この章では、非課税枠をどのように選べば良いのか解説していきます。

現在の貯蓄額を目安に選ぶ

 成長投資枠の年間投資枠は240万円であるのに対し、つみたて投資枠は120万円と、1年の投資可能額に大きな差があります。

 また、成長投資枠は投資できる金融商品の種類が多いのに対し、つみたて投資枠は長期・積立・分散投資での資産形成に適した投資信託に限られます。

 ある程度まとまった金額を投資にまわせる余裕のある方は成長投資枠を、これから月々貯蓄していくことを考えている方はつみたて投資枠でコツコツと運用して増やしていきましょう。

運用期間で選ぶ

 新しいNISAでは、成長投資枠とつみたて投資枠のどちらも非課税保有期間が無期限に延長されたため、どちらの制度でも長期にわたる運用が可能です。しかし、長期にわたってコツコツと積立投資をしたいのであれば、つみたて投資枠を優先的に利用するのが良いでしょう。

 つみたて投資枠であれば、非課税保有限度額の1,800万円を使い切れます。成長投資枠でも積立投資はできますが非課税保有限度額は1,200万円が上限であるため、毎月の積立額が同じである場合、つみたて投資枠のほうがより長期にわたって商品を積み立てられます。

 また、つみたて投資枠の対象商品は長期の積立投資に適しています。時間をかけてじっくりと資産を育てていきたい方は、つみたて投資枠を利用すると良いでしょう。

 一方で、投資信託や株式などを短期的に取引して利益を狙いたいのであれば、一括投資が可能な成長投資枠のほうが適していると言えます。

投資経験の有無で選ぶ

 つみたて投資枠の対象商品は、いずれも運用コストが安く、長期の積み立てに適したものです。初めての投資で、「どの商品を選べば良いのか分からない」方は、まずは厳選された銘柄が対象のつみたて投資枠を選んでみてはいかがでしょうか。

 ある程度投資経験のある方、投資信託ではなく株式での運用を考えている方は、金融商品の選択肢が多い成長投資枠を選んだほうが希望通りの運用ができるでしょう。

投資したい銘柄で選ぶ

 つみたて投資枠は、対象商品のほとんどが日経平均株価やTOPIXなどの指数と連動する成果をめざす「インデックスファンド」です。

 また、対象となる投資信託は、購入時の手数料が無料であり、商品の保有中にかかる費用(信託報酬)も低水準となっています。

 成長投資枠では、つみたて投資枠よりも豊富な種類のインデックスファンドに投資することが可能です。また、指数を上回る成果をめざして運用される「アクティブファンド」も対象商品に含まれています。

 例えば、低コストの投資信託で資金を運用したいのであれば、つみたて投資枠を選ぶと良いでしょう。一方、アクティブファンドに投資をしたい場合は、成長投資枠を利用するのが良いと考えられます。

 投資したい商品を先に決めると、どちらの非課税枠を優先したほうが良いのかが判断しやすくなります。

NISAを利用するときの注意点

 NISAを利用して投資信託を運用するときは、以下の点に注意が必要です。

  • すでに保有している投資信託はNISA口座に移せない
  • 損益通算や繰越控除ができない

すでに保有している投資信託はNISA口座に移せない

 NISAで非課税になるのは、年間投資枠の範囲内で新規投資をし、NISA口座で保有する商品から得られる利益です。

 特定口座や一般口座ですでに保有している商品は、NISAの対象外です。

 通常の証券口座で運用している資産をNISA口座に移すためには、保有する商品を売却して換金し、それを原資として新規投資をする必要があります。

損益通算や繰越控除ができない

 通常の証券口座は、金融商品の取引で損失が発生した場合、他の証券口座で発生している利益と損益通算が可能です。損益通算をすると、発生した損失の分だけ利益が減るため、税負担の軽減効果が期待できます。

 例えば、証券口座Aで40万円の利益、証券口座Bで20万円の損失が発生した場合、損益通算をすると最終的に税金がかかる利益を20万円(40万円−20万円)に減らせます。

 損益通算をしてもなお損失が余る場合は、翌年以降の利益と相殺することが可能です。これを「繰越控除」と言います。

 しかし、NISA口座で損失が出ても特定口座や一般口座の利益と損益通算はできません。よって、繰越控除も対象外となります。

NISAで効率よく運用しよう

 NISAは、少額から非課税で投資ができ、長期の計画的な資産形成にも活用できる非課税制度です。通常では、投資信託の売却益・分配金に対して約20%の税金が課されることを考えると、NISAの非課税メリットは魅力的と言えます。

 特に、つみたて投資枠は扱う商品に一定の基準が設けられており、対象商品が厳選されているため、これから投資を始める方でも投資先を選びやすいと言えるでしょう。つみたて投資枠を活用して毎月コツコツ積立投資を行っていくのに合わせて、ボーナスなどでまとまったお金があるときは成長投資枠で一括投資をするなど、両方をうまく活用していきましょう。投資信託で将来に向けた資産形成をするのであれば、NISA口座の開設を検討してはいかがでしょうか。

 常陽銀行でも「投資信託口座開設アプリ」を使うと投資信託口座とNISA口座の開設が可能です。平日銀行に行く時間がない方でもスマホ1つでお取引ができます。

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(2024年1月4日)

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以 上

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