介護保険適用の住宅改修とは?工事内容と手続きも詳しく解説

介護保険適用の住宅改修とは?

 介護が必要な状態の家族がいる住宅を改修するときに適用される介護保険の住宅改修費支給をご存知ですか。

 介護保険(公的介護保険)とは、65歳以上の高齢者または40歳~64歳で特定疾患をわずらっている患者のうち、介護が必要となる人を社会全体で支えることを目的とした制度です。

 介護が必要になった家族のために住宅をリフォームする際、かかる費用の自己負担を軽減することができます。

 この記事では支給金額や内容、申請方法など詳しく解説します。

介護保険の住宅改修費支給とは?

 介護保険の住宅改修費支給の対象者や支給の制限、介護保険が適用される住宅改修について見ていきます。

安全に在宅生活を継続する目的の工事

 身体機能や脳機能などが低下して介護が必要な状態となり、日常生活が不便になってしまった人が安全に生活しやすい環境を整えるため住宅改修をする場合、工事費用の一部を介護保険から支給してもらえます。

 段差を無くしたり、手すりなどを設置したりして、生活の質の改善を図ることを目的とした住宅改修工事が対象です。

 また、家族がより介護しやすい環境を整え、介護者の負担を軽減する目的もあります。

要支援1~2・要介護1~5の人が対象

 介護保険の住宅改修費支給の対象になるのは介護保険の要支援1~2、もしくは要介護1~5のいずれかの認定を受けており、自宅で生活をしている人です。

 要支援とは、日常生活を送るうえで、多少の支援が必要な状態を指します。要介護とは、日常生活全般において、誰かの介護が必要な状態を指します。

 要支援や要介護に認定された人でも、介護施設に入居していたり、病院に入院していたり、自宅以外の場所に一時的に住んでいたりする場合には適用されません。

 ただし、介護施設や病院にいるものの、自宅に戻ることが決まっており、今後自宅で生活するのに必要な改修であれば対象になることもあります。

支給限度額は20万円で原則1回限り

 住宅改修費の支給金額は、20万円が上限です。

 例えば20万円のリフォームを行った場合、自己負担が1割であれば18万円支給されます。自己負担が2割であれば8割の16万円、3割の場合には7割の14万円まで支給されます。

 自己負担の割合は利用者の年齢や所得によって、1割、2割または3割のいずれかに分類されます。

 介護保険の住宅改修費支給は原則1人1回となっています。20万円を超えない範囲であれば複数回にわけて利用することが可能です。

 住宅に対して1回ではなく、被介護保険者1人につき1回なので父親と母親がそれぞれ要介護認定を受けた場合は、同じ住宅で2回利用できることがあります。

介護保険支給対象となる住宅改修の工事内容

 住宅改修であればどんな費用でも申請できるのでしょうか。介護保険の支給対象になる工事内容について見ていきましょう。

手すりの取り付け

 移動や体を支えるために必要な手すりは、介護保険の対象です。廊下や階段、トイレ、浴室、玄関などの設置場所や二段式・縦付け・横付け等の形状は、体の状態に合わせて選ぶことができます。

 ただし、取り付け工事を必要としない手すりは福祉用具とみなされ、住宅改修の対象にはなりません。

床段差の解消

 車いすを利用したり歩行が難しくなったりしたときに、障害となるのが家の中にある段差です。

 「玄関から廊下や各部屋の出入口の段差を解消する」「リビングなどの敷居を低くする」「スロープを設置する」などの工事は、介護保険の対象となります。

 浴室の床のかさ上げも対象となりますが、福祉用具貸与にあたるスロープや福祉用具購入に該当する「浴室内すのこ」は対象外です。

 また、昇降機、リフト、段差解消機等、動力により床段差を解消する機器を設置する工事は対象になりません。

床または通路面の材料の変更

 居室や廊下、階段、トイレ、浴室、玄関、玄関から道路までの通路等の滑り防止施工や移動の円滑化のために床材を変更する住宅改修も対象です。

 歩行の妨げになる引っかかりや摩擦を軽減させるために、畳などの素材からフローリングやクッションフロアなどの床材への変更や、階段の滑り止め設置、カーペットの取り付けや滑り止めのための表面加工も対象になります。

 また、浴室を滑りにくい床材へ変更したり、屋内だけではなく、屋外通路面を滑りにくい舗装剤へ変更する場合も対象です。

引き戸等の扉取り替え

 移動や開閉時の負荷を減らすために、開き戸から引き戸や折り戸、アコーディオンカーテンなどに取り替える扉の取り換え工事も、介護保険の対象です。

 また、扉位置の変更等に比べて費用が低く抑えられる場合には、引き戸等の新設でも認められます。

 ドア全体の交換だけでなく、ドアノブの変更や戸車の設置にも適用されます。

 ただし、自動ドアに変更した場合は動力部分の設置にかかる費用は対象にならず、自己負担となります。

便器の取り替え

 一般的に和式トイレを洋式トイレに取り替えたり、便器の位置や向きを変更したりする工事が該当します。

 ただし、以下の工事では水洗化または簡易水洗の部分は対象にはなりません。

  • 洋式トイレを暖房便座や洗浄機能付き便座に変更する場合
  • 排水式便座を水洗式便器または簡易水洗式便器に変更する場合

 また、腰掛便座の設置は、福祉用具購入に該当するため対象外です。

付帯して必要となる改修工事

 住宅の改修工事に付帯して必要となる改修工事も対象になります。

 例えば、手すりの取り付け部分の壁材の補強や浴室の床のかさ上げに伴う給排水設備工事などが対象です。

 さらに床材変更のために必要な下地補強や根太補強、通路面素材変更のための路盤整備なども含まれます。

 扉を取り付けるために壁や柱を補強する工事や、便器の取り換えに必要な給排水設備工事や床材の変更なども、改修工事として認められます。

介護保険の住宅改修費支給までの手順

介護保険の住宅改修費支給までの手順

 介護保険の住宅改修支給はどのように申請するのでしょうか。手順をそれぞれ詳しく紹介します。

1.ケアマネージャーに相談

 はじめに担当のケアマネージャーに相談をし、改修場所の希望や内容を検討します。その後、ケアマネージャーが住宅改修に必要な理由書を作成します。

2.住宅改修業者と打ち合わせ・プラン作成

 次に住宅改修業者と改修内容について打ち合わせをします。改修工事のプランを作成し見積書を作ってもらいます。

 見積書は市区町村に提出するために必要となるため、介護保険利用者宛のものを作成してもらいましょう。

3.市区町村の介護保険担当等へ事前申請

 次に市区町村の介護保険担当課へ事前申請を行います。事前申請に必要になる主な書類は、次の通りです。

  • 住宅改修支給申請書(市区町村の介護保険担当部署より入手)
  • 住宅改修が必要な理由書
  • 見積書
  • 住宅改修後の完成予定の状態が分かるもの(写真・図面など)
    など

 見積書は、必ず利用者本人宛のものを用意します。改修工事が介護保険対象外の部分を含む場合には内訳が分かるように記載されているものが必要です。

 市区町村によっては、工事前の改修箇所の写真や図面を提出するように求められることもあるので、事前に申請に何が必要か担当部署に確認しておきましょう。

4.住宅改修工事の施工・完成

 申請を提出した後に申請内容にしたがって工事を実施します。

5.住宅改修費の支給申請・決定

 工事終了後、領収書等の費用発生の事実が分かる書類等を保険者へ提出して支給申請を行います。申請が認められた場合は、介護保険から住宅改修費が支給されます。

 申請には、以下の書類を提出します。

  • 住宅改修工事の領収書
  • 工事費内訳書
  • 住宅改修の完成後の状態を確認できる書類(改修前と改修後それぞれの写真※撮影日が分かるようにする)
  • 住宅所有者の承諾書(改修家屋が申請者本人の所有でない場合)
    など

介護保険の住宅改修費支給で知っておきたいこと

 ここからは介護保険の住宅改修費支給について事前に知っておきたいことを紹介します。

支払い方法は償還払いと受領委任払いの2種類

 介護保険の住宅改修費支給の支払い方法は償還払いと受領委任払いの2種類です。

償還払い

 被保険者が工事終了後、住宅改修業者に工事費全額を支払い、被保険者の指定口座に利用者負担分を差し引いた金額が振り込まれる方法です。

受領委任払い

 工事終了後に被保険者は住宅改修業者に自己負担分のみを支払い、介護保険の適用分は住宅改修業者へ直接支払われる方法です。

 事前の申請と「受領委任払い取扱事業者」に住宅改修を依頼する必要があるので、はじめに工事業者を選定するときに確認しましょう。

 ほかにも、事前登録した住宅改修業者に支払う給付券を発行する給付券方式を導入している市区町村もあるので、住んでいる地域の介護保険について調べておくと良いでしょう。

20万円を超えない場合は分割利用も可能

 基本的に介護保険を適用した住宅改修は1人1回のみ利用可能ですが、限度額20万円を超えない場合には、複数回にわけて利用することもできます。

転居や3段階以上状態区分が上がると再度利用可能

 転居した場合や、住宅改修費を利用したときより要介護状態区分が重くなり、3段階以上の上昇があった場合には、20万円を限度額として再度適用することができます。

給付限度額を超える金額は自己負担

 リフォームを検討すると改修工事をしたい場所が増えてしまい、かなりの金額になってしまうことも少なくありません。

 介護保険における住宅改修費の給付限度額は20万円であり、それを超えた金額は全額自己負担となります。

 自己負担額が高いときは、リフォームローンを利用するのも方法の1つです。

 リフォームローンを計画的に利用することで、少しでも介護の負担を減らして生活できるよう改修に役立ててください。

 常陽銀行のリフォームローンは、通常リフォームやバリアフリーのためのリフォームのほか、エコリフォームにもご利用が可能です。お客さまのご要望に合わせて最適なプランをご提案させていただきます。お借入希望額が1,000万円以下の無担保型ローン、お借入希望額が1,000万円以上の有担保型ローンのご用意があり、どちらもおトクな金利にてご利用いただけます。1,000万円超の場合は有担保型の住宅ローンにて対応しております。

 また、他行からのお借り換えによるローンの一本化もOK。保証料込みで金利の上乗せがないこと、保証人が原則不要であること、三大疾病保障特約付きも選択可能であるなど、各種メリットも満載となっております。

リフォームローンについてはこちら

まとめ

 介護される本人や支える家族のために住宅の改修が必要になったときは、介護保険を申請すると工事費用の自己負担を減らせることがあります。

 介護保険の住宅改修費の支給上限額は20万円です。原則として1人1回の支給となりますが、上限を超えない場合は複数回にわけて支給してもらえます。

 手すりの取り付けや家の中の段差を解消するなど、さまざまな工事が支給対象となります。

 住宅改修費を支給してもらうためには、申請が必要です。ケアマネージャーと相談した結果、住宅の改修が必要になったときは、忘れずに申請をしましょう。

(2022年12月14日)

本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
コラム内容を参考にする場合は、必ず出典元や関連情報により最新の情報を確認のうえでご活用ください。

以 上

関連記事