つみたて投資枠(つみたてNISA)のメリット・デメリット:新制度の成長投資枠との違いも解説

つみたて投資枠(つみたてNISA)のメリット・デメリット

つみたて投資枠・つみたてNISAとは

 社会の変化により預貯金だけでは資産を増やしにくくなってしまった現代では、「貯蓄」ではなく「投資」による資産形成が必要になっています。そこで、2014年1月には個人の資産形成の助成を目的とした少額投資非課税制度「NISA(ニーサ)」がスタートしました。2018年には少額で長期分散投資できる「つみたてNISA」も始まり、気になっていた方は多いのではないでしょうか。そして、2024年からは、NISA制度は大きく変わりました。「つみたてNISA」は2023年末で終了し、2024年以降は新しいNISA口座が開設。新NISAの口座内に、つみたてNISAの内容を引き継ぐ「つみたて投資枠」と一般NISAの内容を引き継ぐ「成長投資枠」が設けられることになりました。

 この記事では、新NISAのつみたて投資枠と旧NISAのつみたてNISAのメリットとデメリット、成長投資枠(旧NISAの一般NISA)との違いのほか、どのような人がつみたて投資枠(つみたてNISA)の運用に向いているのかを解説していきます。

つみたて投資枠(つみたてNISA)のメリット

 通常、投資によって利益を得ると約20%の税金が課されますが、NISA制度を利用して投資をすれば、この税金がかかりません。つみたて投資枠(つみたてNISA)にはこの非課税という大きな魅力に加えて、誰でも手軽に少額から長期積立・分散投資を低コストで行えるというメリットがあります。

 この章では、2023年までのつみたてNISAと2024年以降のつみたて投資枠に共通する、長期の資産形成におけるメリットを紹介します。

非課税期間が恒久または20年間

 つみたて投資枠(つみたてNISA)は、長期積立・分散投資を推奨する制度です。そのため、積立投資した投資信託を長期間非課税で保有できるというメリットがあります。

<非課税期間>

  • つみたてNISA:【2023年末で新規投資終了】非課税期間20年間(最長2042年まで)
  • つみたて投資枠:【2024年以降の投資枠】無期限(恒久)

 つみたてNISAの非課税期間は20年間でした。2023年末の制度終了後はつみたてNISAでの新規投資はできませんが、購入した投資信託は最長2042年まで非課税で保有できます。2024年以降は、新しいNISA口座のつみたて投資枠で新規投資ができるようになり、非課税期間は無期限となります。20年間でも十分長期と言える期間でしたが、2024年以降は無期限となるため、40年、50年という超長期の資産形成も可能になります。投資している間は一切税金がかからないため、資産が大きく膨らんでも税金を気にすることなく投資を続けられるのは大きなメリットです。

毎月一定額を定期的に購入することで「ドル・コスト平均法」を手間なく実現できる

 つみたて投資枠(つみたてNISA)には、投資初心者でも手軽にドル・コスト平均法を実施できるというメリットもあります。ドル・コスト平均法とは、価格が変動する投資商品を「一定金額かつ一定のタイミングで購入することによってリスクを抑える」投資手法です。投資金額と投資タイミングを一定にすることで、平均購入単価を抑えて安定したリターンを求めることができます。

 投資信託の購入方法には、好きなときに好きな商品を好きな金額で購入できる「スポット」購入と、毎月・毎日など決まったタイミングと決まった金額で自動的に購入できる「積立」購入の2種類があります。

 つみたて投資枠(つみたてNISA)の投資方法は「積立」のみと限定されているため、投資タイミングを迷うことがありません。口座を開設した金融機関で積み立て頻度と投資金額、商品を決めれば、自動的にドル・コスト平均法による積立投資を実現できるのです。積み立ての頻度は「毎日」「毎週」「毎月」など金融機関によって選択肢が異なりますが、月に1度、というケースが一般的です。手間なく一定金額を投資したい方や、買い付けのタイミングが分からないという初心者にとっては気軽に投資ができ、リスクを抑えられる仕組みです。

低コストで長期投資が可能

 つみたて投資枠(つみたてNISA)の投資対象商品は、長期の積立・分散投資に適した投資信託・ETFのみに限定されています。あらかじめ対象商品がスクリーニングされているため、投資初心者でも迷うことなく投資を始められて、低コストで続けられる点が大きなメリットです。

 通常、投資信託の購入・運用時には「販売手数料」や「信託報酬」といったコストがかかります。特に永続的に発生する信託報酬は、長期で運用を続けるほど最終的なリターンに影響を及ぼします。しかし、つみたて投資枠(つみたてNISA)の投資信託は信託報酬が低く、販売手数料も0円(ノーロード)と低コストの商品に限定されています。そのため、投資初心者でも安心して利用することができるでしょう。

いつでも資金が引き出せる

 非課税投資枠の中であれば、つみたて投資枠(つみたてNISA)による投資の売買に制限はありません。現金が必要になった際にはいつでも売却して使うことができます。長期投資でありながら、老後資金に限らず自由な目的で資金を活用できるのは、つみたて投資枠(つみたてNISA)ならではのメリットです。

 長期の資産形成で税金が優遇される制度には、つみたて投資枠(つみたてNISA)のほかにもiDeCo(イデコ/個人型確定拠出年金)があります。しかし、iDeCoは老後の資産形成を目的としているため、原則として60歳まで資金を引き出せません。その点、つみたて投資枠(つみたてNISA)であれば教育資金や親の介護資金、住宅ローンの繰上げ返済資金など、利用者のライフプランにあわせて自由に資金を活用できます。

つみたて投資枠(つみたてNISA)のデメリット

 つみたて投資枠(つみたてNISA)は長期の積立・分散投資に特化した制度のため、長期投資をするうえで多くのメリットがあります。とはいえ、元本割れの可能性はゼロではありません。つみたて投資枠(つみたてNISA)に限らず、投資で利益を得るためには元本割れのリスクを理解し許容する必要があることは覚えておきましょう。

 また、つみたて投資枠(つみたてNISA)は長期積立・分散投資に特化していることで投資対象や投資方法に制限があり、そのことで自由度がないと感じる方もいるでしょう。こうしたデメリットもふまえて、2024年以降のつみたて投資枠のデメリットを見ていきましょう。

つみたて投資枠のデメリット

 2024年以降のNISAで利用できるつみたて投資枠は、つみたてNISAにあった非課税期間の制限などのデメリットが解消されたことで使い勝手の良い制度になりました。

 一方で、使い勝手が良くなったことで逆に投資判断を迷う可能性があります。以前は20年間という非課税期間が決まっていたからこそ、翌年に繰り越せない貴重な非課税枠を使い切ろうと考えることができました。しかし、いざ非課税期間が無期限になると「いつからいつまで投資して、いつ売却すればいいか」という判断に悩む方もいるのではないでしょうか。

 初心者だからこそ制限があることが分かりやすさに繋がっていたつみたてNISAですが、つみたて投資枠では投資判断に悩む場面が増える可能性があります。今後のマネープランを実現するうえでも、ネットだけで解決するのではなく、投資を始める際や運用中は身近な金融機関の窓口などで相談してみると良いでしょう。

つみたて投資枠と成長投資枠の違い

 ここでは、2024年以降のつみたて投資枠と成長投資枠との違いを見ていきましょう。

つみたて投資枠と成長投資枠の違い

 2024年以降のNISAは原則1人1口座となり、1つの口座につみたて投資枠と成長投資枠の2つの投資区分が設けられています。

つみたて投資枠
(2023年までのつみたてNISAの内容を継ぐ投資枠)
成長投資枠
(2023年までの一般NISAの内容を継ぐ投資枠)
新規投資可能期間
・非課税保有期間
2024年以降、恒久化により無期限
年間投資上限額 120万円 240万
合計360万円
生涯の非課税投資額 合計1,800万円
(うち、成長投資枠の上限1,200万円)
投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託
(旧制度のつみたてNISAと同様)
上場株式・投資信託など※
投資の方法 積立のみ 制限なし
スポット(一括)・積立
どちらでも可能
  • ①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外

 つみたて投資枠は長期積立・分散投資に適した商品のみという制限があります。ただ、年間投資上限額は低い一方で生涯の非課税投資額は限度額いっぱい活用できます。

 対して成長投資枠は、投資対象が幅広く投資方法も自由に選べる点が特徴です。自由度が高いため、成長投資枠でつみたて投資枠のような長期積立・分散投資をすることも可能ですし、まとまった金額を一括で集中投資することも可能です。投資スタイルに制限があるつみたて投資枠と、投資スタイルが自由な成長投資枠。ライフプランや投資の目的にあわせて併用したり、使い分けたりすると良いでしょう。

つみたて投資枠が向いている人とは?

 つみたて投資枠と成長投資枠の違いで解説したとおり、つみたて投資枠は少額からの長期積立・分散投資に特化した制度です。

 この章では、どのような方がつみたて投資枠を活用した資産形成に向いているのかを、具体的にご紹介します。

投資初心者の人

 つみたて投資枠で扱う投資信託は、金融庁が定めた「長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託」としての条件をすべてクリアしているものです。

金融庁が定めている長期積立・分散投資に適した投資信託の基準

  • 低コストであること:販売手数料はゼロ、信託報酬は一定水準以下の投資信託に限定する
    (例:国内株のインデックス投信の場合信託報酬は年0.5%以下)
  • 運用コストを顧客に通知していること:顧客1人ひとりに対して、その顧客が過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知すること
  • 長期投資に適していること:信託契約期間は無期限または20年以上
  • 長期で資産形成しやすくなっていること:分配頻度が毎月ではないこと
  • リスクの高い運用を行っていないこと:ヘッジ目的の場合等を除き、デリバティブ取引による運用を行っていないこと

 投資信託にはハイリターンを目指す商品から安定運用を目指すものまで、多様な種類があります。つみたて投資枠の対象ファンドはニュースなどで目にする株価指数に連動した商品も対象としているので、値動きが分かりやすい商品から始めることもおススメと言えます。

少ない積立額から始めたい人

 つみたて投資枠での積立金額は金融機関によって異なりますが、ほとんどが毎月1,000円~1万円です。金融機関によっては100円から積み立て設定できる場合もあります。貯蓄や家計の状況にあわせ、無理のない積立額で投資を始められるのもつみたて投資枠の魅力です。積立金額は途中で適宜変更できるため、まずは余裕を持って無理のない積立額で始めることが大事です。

長期で堅実に投資したい人

 つみたて投資枠の対象となる投資信託は、コストが低かったり、運用期間が長いものなど長期的な資産形成に適した商品を対象としています。また、毎月一定金額を積み立てるドル・コスト平均法で投資を行っていくため、リスクを分散しながらの投資ができます。将来のために毎月少しずつコツコツ積み立てをしていきたい人に向いていると言えるでしょう。

つみたて投資枠は投資初心者の人におススメ!

 少額で始められ、長期にわたりコツコツと継続して資産形成できる「つみたて投資枠」。つみたてNISAの口座は2023年末で新規投資期間が終了しましたが、2024年以降は新しいNISAのつみたて投資枠で、つみたてNISAと同様の長期投資が可能です。投資にかかる手間も少なく、計画的に資産を増やしていこうと思っている方はもちろん、これから投資を始めようと思っている初心者の方にもおススメの制度です。

 常陽銀行では「投資信託口座開設アプリ」を使うと投資信託口座とNISA口座の開設が可能です。平日銀行に行く時間がない方でもスマホ1つでお取引ができます。

 また、直接相談したいという方は、銀行へ行く前にWEBで来店予約が可能です。待ち時間なくご案内できますので、お気軽にご相談ください。

店舗での相談予約についてはこちら

(2024年1月4日)

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以 上

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