出産手当金とは?受給に必要な条件や支給額・申請方法を解説!
出産手当金とは?
出産手当金とは、健康保険の被保険者が出産のために会社を休み、給与の支払いがない間に一定の日数範囲内で支給される補助金です。一定条件を満たしたうえで申請を行うと受給できます。
支給期間はどのくらい?
出産手当金の支給期間は出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までです。
例)
- 出産予定日:11月1日
- 実際に出産した日:11月5日
- 出産予定日から出産日までの日数:+4日
単体妊娠の場合、出産予定日前の42日間+予定日から実際に出産した日までの4日間+実際に出産した日から56日間分=合計102日間分のうち、会社を休んだ日数分が支給されます。
条件によっては退職後も受給可能
産休などを取得していたとしても、何らかの事情により退職する場合、一定の条件を満たしていれば退職後も出産手当金を受給できます。一定条件は以下の2点です。
退職後に出産手当金が受給できる条件
- 退職日(健康保険の被保険者の資格を喪失した日)の前日までに、1年以上継続した被保険者期間(健康保険任意継続の被保険者期間を除く)がある。
- 健康保険の資格喪失時に出産手当金を受けている、または受給できる条件を満たしている。
なお、退職日に出勤してしまうと継続給付を受ける条件を満たさず、資格喪失後(退職日の翌日)以降の出産手当金は受給できないため注意しましょう。
出産手当金の受給要件
出産手当金の受給対象となるケースと対象外となるケースをそれぞれ紹介します。基本的には健康保険に加入している女性が支給対象であることを覚えておきましょう。
対象となる3つの条件
出産手当金の支給対象となる3つの条件を表にまとめました。出産手当金を受け取るためには下記の3つの条件をすべて満たす必要があります。
健康保険に加入している (被保険者である) |
妊婦本人が、所属している企業の健康保険組合や、協会けんぽ、共済組合等に加入している必要があります。健康保険に加入していれば、正社員以外のパートやアルバイトも対象です。 |
妊娠4カ月以降の出産 | 健康保険で定義されている「出産」とは、妊娠4カ月(85日)以上を経過した後の出産や流産などを指します。 |
出産のために休職している | 産前産後休暇により仕事を休んでおり、給与を受け取っていないことが条件となります。産休中に給与の支払いがある場合、その給与の日額が出産手当金の日額よりも少ない場合は給与と手当金の差分が支給されます。 |
健康保険に加入しており、1年以上同じ企業に勤めている女性であれば、受給条件を満たすことはそこまで難しくはありません。ただし、産前産後休暇中の給与支給有無については企業によって違いがあるため、予め確認しておくようにしましょう。
対象とならないケース
健康保険に加入していても、支給の対象とならないケースもあります。対象外となる条件を紹介します。
国民健康保険に加入している | 自営業やフリーランスなどで、国民健康保険に加入している方は申請ができません。しかし、会社で加入している健康保険が国民健康保険である場合は、給付対象となる可能性があります。 |
被保険者本人ではなく、扶養家族である | 出産手当金を受給するためには、妊婦本人が健康保険の被保険者本人でなければなりません。そのため、夫が企業に勤めていて健康保険の被保険者であっても、扶養家族になっている場合は支給対象外となります。 |
健康保険の任意継続をしている | 退職などによって勤めていた企業の健康保険の被保険者資格を喪失する際、希望により一定条件を満たせば、前職の健康保険の加入を継続できます。この「任意継続」と呼ばれる状態で健康保険に加入している方は、出産手当金の対象外となります。 |
産休中に支給される給与が、出産手当金の日額以上 | 受給資格を満たしていても、勤めている企業の規定により産休中も給与が支給され、その金額が出産手当金の額よりも多ければ支給対象外となります。産休とあわせて有休消化を考えている方は注意しましょう。 |
出産手当金と出産育児一時金の違い
出産時に申請できるもう1つの給付金に「出産育児一時金」があります。出産手当金との違いはどんなものがあるのでしょうか。比較しやすいよう表にまとめました。
出産手当金 | 出産育児一時金 | |
---|---|---|
給付の目的 | 産休中の生活保障のため。 | 出産にかかる費用の負担を軽減するため。 |
申請先 | 勤めている企業の健康保険組合、協会けんぽ、共済組合に申請する。国民健康保険は不可。 | 勤めている企業の健康保険組合、共済組合や協会けんぽ、国民健康保険に申請する。 |
給付される金額 | 妊婦本人の給与額や出産日による。 | 胎児1人あたり42万円(出産した医療機関による)。 |
出産手当金と出産育児一時金は、そもそも給付目的が異なります。
出産手当金の目的は産休中の生活保障であるのに対して、出産育児一時金は出産にかかる費用の負担を軽減するためです。また、出産手当金は本人が健康保険に加入している必要がありますが、出産育児一時金は、被保険者本人の扶養家族、夫が企業に勤めていて1年以上健康保険に加入しており、妻が扶養家族となっていれば「家族出産育児一時金」として申請が可能です。
出産手当金支給額の計算方法
出産手当金の1日あたりの支給額は、被保険者本人の過去12カ月の給料(標準報酬月額)を基準とした日給の2/3に相当する額と定められています。
自分の支給額がどのくらいになるか算出してみましょう。
出産手当金の総額は次の計算式で表すことができます。
- 標準報酬日額×2/3×(産前休暇日数42日+産後休暇日数56日+予定日の増減)
この標準報酬日額は次の計算式で算出できます。
- (支給開始日以前の過去12カ月間の給与合計額÷12)÷30日
なお、出産を理由とした休暇の間に出産手当金よりも少額の給与が支払われた場合には、当初の出産手当金と給与の差分が支給される決まりになっています。
出産手当金の申請方法
出産手当金の申請方法を説明します。産休を取得する前に、勤務先から所定の申請書類などを受け取り、担当の医師や助産師などに必要事項を記入してもらうなど事前に準備が必要です。具体的な手順は次の通りです。
- 申請書を用意する
- 必要事項を記入する
- 医師・助産師に記入してもらう
- 勤務先へ申請書を提出する
受給対象となるのかを確認したうえで、健康保険出産手当金支給申請書(以下、申請書)を用意します。申請書は産休前であれば社内の担当部署から渡されることもありますが、全国健康保険協会のホームページからダウンロードすることも可能です。必要事項を自分自身で記入し、担当医や助産師に申請書内の「医師・助産師記入欄」を記入してもらいましょう。すべて記入した申請書を、人事や総務など勤務先の健康保険担当部署へ提出します。申請書内の「事業主が証明するところ」は企業側に記入してもらう部分のため、提出と同時に記入を依頼しましょう。申請書の記入がすべて終われば、企業の担当者が全国健康保険協会へ提出してくれます。
出産手当金の申請期間は出産の翌日から2年以内となり、期限を過ぎると受給額が減少してしまいます。また、出産後は新生児のケアで長時間出かけるのが難しい可能性もあるため、早めに準備を済ませておくと良いでしょう。
まとめ
出産手当金は、健康保険に加入していても一定の条件を満たさなければならないため、産休における会社の規定などによっては出産手当金の対象とならないこともあります。産休を取ることを決めたら社内の担当部署などにも相談し、まずは自分が支給対象となるかを確認してみましょう。
(2022年5月23日)
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以 上