確定拠出年金のデメリットとは?特長や注意点を徹底解説!

確定拠出年金のデメリットとは?

確定拠出年金とは

 確定拠出年金は、公的年金以外で老後資産を作るために企業・個人それぞれの加入者が月々の掛金を積み立てて運用を行える私的年金制度です。運用した資産は、60歳以降に年金や一時金として受け取れます。近年では、従来の退職金のように、従業員が定年退職時に資金を受け取れる制度として導入している企業も多くあります。確定拠出年金の種類の違いや、通常の退職金との違いを解説します。

企業型と個人型の違い

 確定拠出年金には企業型と個人型の2種類があります。企業型は企業の従業員が加入でき、個人型は現在国民年金に加入している個人事業主やその家族、企業年金制度のない企業の従業員が加入できます。2017年1月まで公務員や主婦(夫)は加入できませんでしたが、現在は誰でも加入できます。個人型と企業型の違いを以下にまとめました。

個人型確定拠出年金(iDeCo) 企業型確定拠出年金
加入方法 任意で加入 企業が導入している場合に加入
掛金の支払い 申込者本人 企業
納付の方法 口座振替 企業が納付する
金融機関の選択 申込者本人 企業(個人では指定不可)

 一般的に、企業型の場合は企業が掛金を支払うため、個人で金融機関の選択ができません。一方で個人型の場合は、個人が任意で加入するため、金融機関を自分で選択できます。中には、企業型に加入しながら、プライベートで個人型に加入しているというケースもあります。老後資金が心配な方は、両方での運用を検討しても良いかもしれません。

退職金と企業型確定拠出年金の違い

 企業型確定拠出年金制度と似ているものとして、企業が福利厚生の一部として導入している退職金制度があります。具体的にどのような違いがあるのかを説明します。

退職金制度 企業型確定拠出年金
掛金の支払い 企業が支払う 企業が支払う
運用 企業が決定する 自分で選択できる
受取額 会社規定 運用成果が反映される
ポータビリティ 他社へ移行できない 転職・退職時は他社へ積立金を移行できる

 退職金制度は、勤続年数などにより定年退職時に決められた金額を受け取れる制度です。しかし、数十年勤務してくれた従業員に対する退職金額は膨大なものとなり、企業の経営にとっては大きな負担となっていました。そのため、近年では退職金の代わりとして確定拠出年金制度を導入する企業が増加傾向にあります。確定拠出年金は「自分の老後資金は自分の責任で管理・運用する」という特長があるため、会社や個人が負担した金額を自分自身で運用して増やせるのがメリットです。

確定拠出年金(iDeCo)のメリット

 確定拠出年金(iDeCo)に対する理解を深めるためには、メリットとデメリットを把握する必要があります。まずは具体的なメリットの内容から確認しておきましょう。

税制優遇

 確定拠出年金に加入すると、掛金を拠出する際に税制面での優遇措置を受けられます。

 控除の上限は、厚生年金に加入しており企業型確定拠出年金に加入していない場合は毎月23,000円、企業型確定拠出年金がある場合は毎月12,000円もしくは20,000円、自営業の場合は毎月68,000円です。

 限度額の範囲で拠出した掛金は全額所得控除の対象となり、非課税になります。

 たとえば、企業型確定拠出年金にのみ加入している方が、iDeCoに毎月20,000円の掛金を支払うとします。この場合、20,000円(拠出限度額)は所得控除の対象であるため、年間で24万円分が非課税となります。

 さらに、確定拠出年金は受取時にも税制面でのメリットがあります。確定拠出年金で積み立てた金額は、原則60歳以降に受け取れます。受け取り方法は「年金」「一時金」「併用」を選択できます。

 積み立てた金額を一時金として一括で受け取る場合、税制上で退職金として扱われるため、退職金所得控除を利用することができます。年金として分割して受け取る場合には「雑所得」として扱われ、公的年金等控除を受けられますので、受取時も非課税メリットを受けることができます。

運用益が非課税

 通常、個人で資産運用をする際は株式や投資信託の運用益に20.315%課税されますが、iDeCoの場合、運用で得た利益は非課税となります。

 拠出時や運用益が全額非課税となるほか、受取時も税制面での優遇措置を受けられるため、老後資金の準備にはiDeCoがおススメです。

確定拠出年金(iDeCo)のデメリット

 確定拠出年金は、一度始めてしまうと原則途中で資金の引き出しができません。後悔しないためにも、確定拠出年金のリスクやデメリットを洗い出して理解を深めておきましょう。

60歳まで引き出せない

 確定拠出年金は原則、積み立てた資産を途中で取り崩すことはできません。引き出しができるようになるのは60歳以降となるため、それよりも前にさまざまなライフイベントなどで必要な資金は別の方法で積み立てておく必要があります。

 老後の資金が心配だからといって、貯蓄できる金額を全て確定拠出年金にまわすのは危険です。短期的に必要となりそうな資金は別途、無理のない範囲で積み立てておくようにしましょう。

確定拠出年金(iDeCo)の注意点

確定拠出年金(iDeCo)の注意点

 デメリット以外にも、注意が必要なポイントを解説します。2017年から主婦(夫)や公務員の方も個人型確定拠出年金に加入できるようになりましたが、その方たちは特に注意が必要です。

掛金の全額所得控除が受けられない

 確定拠出年金には所得税や住民税を減らす効果があります。しかし、無収入の場合や収入が一定額以下の場合は、そもそも所得税や住民税を払っていませんので、この所得控除のメリットを受けることができないことに注意しましょう。

一時金で受け取る場合の注意点

 確定拠出年金の受取方法は、退職後に年金として受給する、一時金として受け取る、もしくは両者を併用するの3つのうちから選択できます。年金として受給する場合は、一般的な年金と同様で、公的年金等控除の対象となります。

 しかし、一時金で受給する場合、受け取る年金資産と退職金の合計額が退職所得控除の範囲内でなければなりません。退職所得控除は勤続年数によって決まるため、人によって異なりますが、控除額を超えてしまうと別途税金を支払う必要があります。

 年金や退職金の額が比較的大きい公務員の方や、上場企業に勤務している方は事前に確認しておきましょう。

資産運用のリスクがある

 確定拠出年金は掛金の金額が固定されていますが、将来の給付額は運用結果に左右されます。

 また、運用商品の中には元本確保型ではないものもあり、運用が上手くいかないと結果的に資産が減ってしまうリスクがあります。個人型に限らず企業型であっても、資産運用自体は自己責任で加入者本人が行います。商品により期待できるリターンや想定すべきリスクの大きさが異なるので、ご自身のお考えに合った商品を選択することが大切です。

 一方で、確定拠出年金は、通常の資産運用に比べると元本や運用益に税金がかからず、長期的に積み立てをし、リスクを抑えた運用ができるのも魅力と言えるでしょう。

確定拠出年金が不安な方はNISAがおススメ

 60歳まで引き出すことができないという確定拠出年金のデメリットが気になる方は、金融機関で契約できるNISAもおススメです。NISAは少額投資非課税制度とも言われ、投資信託の運用益や配当にかかる税金が非課税になる制度です。

 NISAの場合、資金が必要になった時はいつでも引き出すことができます。また、確定拠出年金と同じように毎月の積立投資の他に、好きなタイミングで投資することもできます。毎月少額で積み立てを行いながら、ボーナスなどを活用して一括投資をすることができるのは、確定拠出年金にはないメリットです。

NISAについてはこちら

まとめ

 金融機関の担当者などに相談し、確定拠出年金のメリットとデメリット、そしてNISAの特長についてさらに理解を深め、自分に合った資産運用ができるよう少しずつ知識をつけていきましょう。

(2024年1月4日)

本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
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以 上

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