親の健康寿命はどのくらい?老々介護で共倒れにならないために今からできる対策

親の健康寿命はどのくらい?

 医療技術の発展により、年々延びている寿命。確かに、人々が生きられる年数は延びましたが、大切なのは不自由なく健康な生活を送れるかどうかです。近年は、自立した生活を送れる期間「健康寿命」という指標に注目が集まっています。

平均寿命と健康寿命の違い

 平均余命とは、ある年齢の人が現時点から残り何年生きられるのかを数値にしたもので、厚生労働省が簡易生命表で公表しています。0歳の人の平均余命を「平均寿命」と言い、日本における平均寿命は男性で81.64歳、女性で87.74歳となっています。

 諸外国と比較すると、日本と同様に男性の平均寿命が81歳を超えている国は、シンガポール、スイス、アイスランド、ノルウェーなど、北欧の国に多い傾向が見られました。また、女性の平均寿命は日本が世界TOPで、韓国、シンガポール、フランスと続いています。健康寿命は「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」のことを指します。

 2019年に行われた厚生労働省の調査によると、日本の健康寿命は、男性で72.68歳、女性は75.38歳でした。平均寿命と比較すると、男性で8.73歳、女性で12.06歳の差があります。この差が拡大すれば、不健康な期間が延びることになり、医療費や介護費の増加につながります。健康寿命の延伸は生活の質の向上や医療費の削減などのメリットがあり、政府にとっても中核な政策の1つになっています。

介護が必要となる主な原因・きっかけ

介護が必要となる主な原因・きっかけ

 どのようなことをきっかけにして、介護が必要になるのでしょうか。厚生労働省の調査によると、介護が必要になる原因として最も多かったのが認知症で17.6%、続いて脳血管疾患(脳卒中)が16.1%、高齢による衰弱(フレイル)が12.8%でした。

認知症

 認知症とは、何らかの病気や障害などによって脳の機能が低下し、日常生活や仕事に支障をきたす状態のことを言います。加齢による物忘れとは異なり、認知症では物忘れに対して無自覚で、ときに被害妄想を抱いたり、物忘れの症状が進行したりする特長があります。

 認知症が進行すると、入浴、トイレ、食事など日常の基本的動作ができなくなります。さらに症状が進むと、抑うつ、不眠、幻覚、妄想などの精神症状も発症し、家族が介護をすることは大きな負担となります。

脳血管疾患(脳卒中)

 脳の血管が詰まったり破裂したりして、引き起こされる病気の総称です。脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などが代表的な疾患として挙げられます。一命を取り留めたとしても、手足の麻痺、言語障害、運動障害、感覚障害などといった後遺症が残って、寝たきりになるケースも少なくありません。

高齢による衰弱(フレイル)

 フレイルとは、加齢に伴って心身が老い衰えた状態を指します。高齢者は健常な状態からフレイルを経て、徐々に要介護状態に移行します。フレイルの状態下では、病気やケガのリスクが高く、また一度病気を発症すると長期化・悪化する傾向にあります。周囲の家族が体調の異変に気付き、事前の対策を講じられれば、要介護状態への移行を防ぐことができます。

骨折・転倒

 年齢を重ねると、活動量の減少や筋力の低下、薬の影響などにより、転倒しやすい状態になっています。転倒によって、骨折や頭部外傷といった大ケガを引き起こし、それをきっかけに介護状態になってしまうこともあるでしょう。打ちどころが悪ければ、死に至る恐れもあります。

 消費者庁によれば、65歳以上の転倒、転落、墜落による死亡事故は、交通事故の約4倍も多いとされています。また、転倒事故の発生場所の半数は自宅です。自宅の中で最も転倒が多いのは「浴室・脱衣所」、続いて「庭・駐車場」「ベッド・布団」でした。

健康寿命を延ばすために大切なポイント

 健康寿命を延ばすには、どのようなポイントに気を付ければ良いのでしょうか。ここでは、健康寿命を延ばすために大切なポイントを解説します。

  • 禁煙をする
  • 節度ある飲酒を心がける
  • バランスの良い食事を心がける
  • 運動習慣を身につける
  • 社会関係を保つ
  • 適切に睡眠時間を確保する
  • 定期健診を受ける

 7つのポイントを全て守ったからといって、病気やケガを回避できるわけではありませんが、リスクを下げることはできるでしょう。このうち、5の「社会関係を保つ」は、一見、健康寿命とは無縁に感じますが、前述したフレイルは社会活動への機会減少なども発生要因の1つとして考えられています。

親の介護が必要になる前に準備しておくこと

親の介護が必要になる前に準備しておくこと

 いくら万全に対策しても、いずれ親の介護が必要になる時は来るもの。今からできる備えにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、準備しておくべきポイントについて解説します。

介護にかかる費用を準備しておく

 生命保険文化センターの調査によると、住宅改造や介護用ベッドの購入費など介護に要する一時的な費用は平均74万円、管理費(水道光熱費)、居住費、食費、介護サービス費など月々の費用が平均83,000円となっています。

 果たして、この介護費用を年金だけで賄うことはできるのでしょうか。厚生労働省の調査によると、年金の平均受給額(月額)は、厚生年金と国民年金を合わせて男性が164,770円、女性が103,159円となっており、介護にかかる月々の平均費用83,000円は決して低い金額ではないことが分かります。

介護保険制度を使えば、自己負担額が10~30%に

 介護保険制度を利用すれば、施設入居や居住、リハビリテーション、日常生活の支援など、介護サービスでかかった費用の自己負担額が10〜30%になります。ただし、送迎や家事代行、宅食、訪問理容師などは介護保険適用外となります。

認知症と判断されると、口座凍結される

 認知症と認定されてしまうと、金融機関は財産保護の観点から口座凍結を行います。口座凍結されてしまうと、預金の引き出しはおろか、解約もできなくなってしまいます。また、口座に限らず、生前贈与や不動産の売買契約などにおいても無効となります。こうなると、親の老後資金に頼ることができず、介護をする子供や親族の貯蓄を切り崩さなければいけません。

 法定後見制度を利用すれば、親族が代わりに財産を管理できますが、成年後見人の選任は家庭裁判所への申し立てが必要です。手続きには時間とお金がかかります。また、無事選任されても、毎年、収支と財産の状況を家庭裁判所へ報告しなければいけません。こういった事態を防ぐためにも、認知症になる前にまとまったお金の工面や生前贈与をしておくことが重要です。

両親の意向を聞いておく

 判断能力がある元気なうちに、両親へ日々の生活費や財産管理、相続などについての意向を聞いておきましょう。また、時間に余裕があるうちに任意後見人を決めておくのも1つの手です。任意後見人とは、認知症になった後に申し立てを行って決定する法定後見制度と違い、判断能力があるうちに、本人が後見人を選定できる制度です。

遺言を準備しておく

 遺言がないと相続人同士の話し合いで分割方法を決める必要があり、トラブルの原因となります。遺言を作成する場合は、家庭裁判所の検認手続きが不要な公正証書遺言にしましょう。遺言書には、財産の処分方法、相続、後見人などに関する事柄を記載します。ただし、証人が2人以上いない場で書かれたもの、判断能力がない状態で書かれたものに関しては無効となるため、注意が必要です。

まとめ

 人生100年時代と言われていて、寿命は延びているものの、今日明日にでも病気やケガ、事故などをきっかけに要介護状態になる可能性は誰にでもあります。親の介護の問題を後回しにせず、元気なうちに家族で話し合い、いつ起こるか分からない、介護の備えをしておきましょう。

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(2022年5月10日)

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以 上

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