新NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の違いは?使い分け方法も解説

新しいNISA制度では、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」の2つの非課税枠を併用できる仕組みに変わりました。両者の大きな違いは、「投資対象商品」「年間投資枠」「投資方法」の3つです。
つみたて投資枠では、長期運用に適した投資信託に年間最大120万円まで積立投資が可能です。一方の成長投資枠は、個別株やETF、幅広い投資信託に年間240万円まで、一括・積立どちらの方法でも投資ができます。
非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠合計で1,800万円で、成長投資枠のみ利用する場合は1,200万円となります。
この記事では、それぞれの特徴を比較しながら、どちらをどう使い分けるべきかを解説していきます。
2024年以降のNISAには「つみたて投資枠」と「成長投資枠」がある

2023年までのNISA制度では「一般NISA」と「つみたてNISA」という、成人向けNISA口座が2種類ありましたが、2つの口座は併用できなかったため、どちらか一方を選択しなければなりませんでした。
しかし、2024年以降のNISA制度では、NISA口座は1つになり、1つの口座内に2つの非課税投資枠が設けられました。
2024年以降のNISAに設けられた2つの非課税枠
- つみたて投資枠:2023年までのNISA制度における「つみたてNISA」の役割を引き継ぐ非課税投資枠。つみたてNISAと投資対象商品が同じ。
- 成長投資枠:2023年までのNISA制度における「一般NISA」の役割を引き継ぐ非課税投資枠。ただし、一般NISAから投資対象商品が一部変更されている。
NISA制度 新旧比較表
2023年までのNISA制度 | 2024年以降のNISA制度 | |
---|---|---|
口座 |
|
|
新規投資 可能期間 |
2023年12月末まで | 2024年1月以降、恒久化 |
非課税保有期間 |
|
無期限 |
非課税保有限度額 (総枠) |
|
1,800万円 (うち、成長投資枠は1,200万円) |
非課税枠の 再利用 |
不可 | 可能。商品を売却すると、翌年以降に売却部分(投資元本部分)の非課税枠を再利用できる。 |
2024年以降のNISA制度では、2つの非課税枠を併用できるため、より自由度の高い取引が可能になります。
【比較表】つみたて投資枠と成長投資枠の違い

ここからは、つみたて投資枠と成長投資枠の違いを見ていきましょう。主に違う部分は、「投資対象商品」「年間投資枠」「投資方法」です。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
非課税保有期間 | 無期限 | |
制度(口座開設期間) | 恒久化 | |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円 | |
1,200万円(内数) | ||
投資対象商品 | 長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準を満たした投資信託に限定) | 上場株式・投資信託等 ※ |
投資方法 | 積立のみ | 制限なし (一括・積立どちらも可) |
- ※①整理・監理銘柄②信託期間20年未満、毎月分配型の投資信託およびデリバティブ取引を用いた一定の投資信託等を除外
投資対象商品の違い
つみたて投資枠と成長投資枠では、投資できる商品の種類に違いがあります。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
投資対象商品 |
長期・積立・分散投資に適した一定の投資信託(金融庁の基準を満たした投資信託に限定) <つみたて投資枠対象商品の概要>
|
上場株式・投資信託等
|
非課税枠によって投資できる商品は、それぞれの意義や趣旨により、選定されています。
つみたて投資枠(旧制度:つみたてNISA)
投資のリスクを可能な限り軽減しつつ、安定的な資産形成を行うためには、長期の積立・分散投資が有効と考えられる。投資対象を分散させることで特定のリスクを限定することが可能となり、投資時期の分散(積立投資)により高値掴みなどのリスクを軽減できるほか、長期で保有することにより投資リターンの安定化が可能となる。
成長投資枠
企業の成長投資につながる家計から資本市場への資金の流れを一層強力に後押しする観点から、上場株式への投資が可能な一般NISAの役割を引き継ぐ成長投資枠を設ける。
年間投資枠の違い
つみたて投資枠と成長投資枠では、非課税で投資できる金額も違います。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円 (うち、成長投資枠の上限1,200万円) |
1年間で投資できる金額はつみたて投資枠と成長投資枠で異なります。また、非課税保有限度額は、つみたて投資枠と成長投資枠の合計で1,800万円まで投資することができます。ただし、成長投資枠の上限は1,200万円となっているため、満額を使い切るにはつみたて投資枠と併用する必要があります。
投資方法の違い
つみたて投資枠は積立投資のみとなり、成長投資枠は一括投資・積立投資が可能です。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
投資方法 | 積立投資のみ | 一括投資・積立投資 |
成長投資枠には投資方法の制限がありません。貯蓄やボーナスなどのまとまった資金を一括投資したり、つみたて投資枠と同様にコツコツ積立投資したり、投資方法を自由に選べます。
また、つみたて投資枠・成長投資枠で別々の投資方法にする必要はありません。両方とも積立投資にする方法でも良いでしょう。
つみたて投資枠のメリット・デメリット
つみたて投資枠のメリットは、少額から無理なく投資を始められ、長期の積立投資によって着実に資産形成を目指しやすい点です。また、対象ファンドは購入手数料が無料で信託報酬も低めに設定されており、コストを抑えて運用できる点も魅力です。
一方、デメリットとして、投資できる商品が金融庁の基準を満たす投資信託に限られるため、選択肢がやや限定されることや、一括で大きな資金を投じる運用ができない点が挙げられます。
成長投資枠のメリット・デメリット
成長投資枠のメリットは、購入できる商品の種類が豊富で、年間投資枠がつみたて投資枠より大きい点です。つみたて投資枠では扱えない個別株式への投資も可能で、一括購入もできるため投資手法の自由度が高いことも特徴です。
一方、デメリットとして、つみたて投資枠の対象商品と比較し、手数料コストが大きくなる可能性があります。また、一括投資を行う場合には購入や売却のタイミングを自分で判断する必要があり、時間分散ができない分、価格変動の影響を受けやすい点が挙げられます。
NISAのつみたて投資枠と成長投資枠の活用方法

つみたて投資枠と成長投資枠はそれぞれ特徴が違います。そのため、「別々の投資商品を選び、別々の投資方法にすべき?」「どう使い分けすれば良いのか、分からない」と悩む人もいるでしょう。しかし、別々の方法にこだわったり、無理に使い分けたりする必要はありません。
大切なのはご自身の投資スタイルに適した方法を選ぶことです。参考までに、代表的な投資スタイルを2つご紹介します。活用方法を考える際の参考にしてみてください。
活用方法1.普段はつみたて投資枠。ボーナスが出たら成長投資枠。
「投資資金は毎月の給与から捻出。ボーナスや臨時収入があれば、それも投資に使いたい」という人には、つみたて投資枠と成長投資枠を併用する方法がおススメです。
【例】
- つみたて投資枠:給与が出たタイミングで毎月3万円を積立投資
- 成長投資枠:ボーナス月に20万円~30万円を一括投資
普段はつみたて投資枠でコツコツ積立投資を行い、ボーナスが入った際は成長投資枠で一括投資を行う方法です。投資商品は同じでも別々でも、どちらでもかまいません。悩んだ場合は、分散投資しやすく続けやすい、つみたて投資枠の対象になっている投資信託から選んでみるのも良いでしょう。
活用方法2.毎月コツコツ少額をつみたて投資枠で
「投資が初めてでリスクが怖い」「少額から始めたい」という人は、つみたて投資枠から始めて投資に慣れていく方法をおススメします。
【例】
- つみたて投資枠:給与や貯蓄から毎月1万円を積立投資
つみたて投資枠で投資する投資信託は、さまざまな銘柄を詰め合わせたパッケージ商品のようなものです。資産分散によってリスクを抑えやすい設計になっているのが特徴です。
そのうえ、つみたて投資枠の対象商品は少額からの長期積立・分散投資に適したものだけが厳選されています。リスクが気になる人でも少額で慎重に投資を始められるため、まずはつみたて投資枠で投資に慣れていきましょう。
活用方法3.まとまった資金がある方は成長投資枠を活用
ボーナスや退職金・貯蓄など、ある程度まとまった資金を運用したい方は、成長投資枠での投資が効果的です。
成長投資枠であれば年間最大240万円まで一括で投資できるため、まとまった資金を非課税枠内で運用することができます。つみたて投資枠は年間120万円までですが、毎月積立で利用する必要があるため、まとまった資金を運用するためには成長投資枠の活用も有効です。
成長投資枠で余剰資金を投資し、つみたて投資枠でも継続的に積立投資を行うことで、非課税枠を効率的に活用できます。
活用方法4.つみたて投資枠と成長投資枠でバランスの良い運用
新NISAでは、2つの枠を組み合わせて運用することで、バランスの良い運用をすることもできます。
例えば、つみたて投資枠ではシンプルなインデックスファンドなどをコツコツ積み立て、成長投資枠では成長性の高いアクティブファンドなどに積極的に投資するといった使い分けも可能です。
長期の運用による着実な資産形成と、成長が見込める投資によるバランスの良い運用を行うため、各枠の特性を活かした運用を考えてみましょう。
成長投資枠で成長性の高い運用を考えている方は下記の記事も参考にしてみてください。
銀行なら窓口で、使い分けや活用方法の相談ができる
上記で紹介した方法は、一般的な活用事例です。ご自身に合わせた活用方法や投資方法をもっと細かく考えたい人は、窓口で相談できる銀行をご活用ください。
銀行はネット証券に比べて手数料が割高と言われることがありますが、対面によるサポートがあるのは窓口を持つ銀行の強みです。対面であれば、保有資産や収入、リスク許容度、ライフプランなど個々の状況に合わせた相談が可能です。口座開設手続きから投資の始め方、投資金額の決め方、商品選びまで専門家に相談したい人は、窓口を活用することを検討してみてください。
常陽銀行の新NISA銘柄
常陽銀行では、ニーズに合わせた多彩な新NISA対象の投資信託を取り扱っています。
つみたて投資枠では、長期・積立投資に適した投資信託がラインナップされています。例えば、国内外の株価指数に連動するインデックスファンドや、複数の資産に分散投資できるバランス型ファンドなど、初心者にも選びやすい投資信託が揃っています。
成長投資枠では、国内外の株式に幅広く投資するアクティブファンドや、海外の比較的利回りが高い債券に投資するファンドなど特定のテーマに着目したファンドから選択可能です。
ラインナップの中から、ご自身のリスク許容度や投資目標に合わせて、銘柄を選択すると良いでしょう。
つみたて投資枠と成長投資枠に関してよくある質問
つみたて投資枠と成長投資枠に関してよくある質問を解説します。
成長投資枠で積み立て設定はできますか?
成長投資枠でも、一括投資だけでなく、毎月一定額を自動で買い付ける積立投資が可能です。
積立投資を活用することで、時間分散によるリスク低減を図りながら無理なく資産形成を続けることができます。
つみたて投資枠と成長投資枠のどちらが良いですか?
ご自身の資金状況や投資目的によって、適した枠は異なります。毎月少額からコツコツと長期投資を続けたい方には、つみたて投資枠が向いています。一方、ある程度まとまった資金で多様な商品に投資したい方には、成長投資枠の活用が有効でしょう。なお、2つの枠は併用も可能ですので、それぞれのメリットを活かして使い分けることも大切です。
まとめ

つみたて投資枠はつみたてNISAの、成長投資枠は一般NISAの役割を引き継ぐ非課税投資枠です。それぞれ特徴が異なるため、別々に使い分けるべきか悩む人もいるでしょう。しかし、2024年以降のNISA制度では2つの非課税枠を併用できるようになっています。
また、制度改正により、商品を売却すると翌年以降に非課税投資枠の再利用が可能になるなど、2024年以降のNISA制度はより使いやすく、自由な非課税投資が可能になりました。NISA制度を活用して、ライフプランに合わせた資産形成を行ってみましょう。
常陽銀行では、NISAに関するご相談を承っています。また、NISA口座開設をご希望される場合には、窓口・スマホで、手続きが可能です。スマホで口座開設手続きをした後に、窓口でご相談いただくことも可能です。非課税投資枠の活用方法や商品の選び方、投資金額の決め方など、多様なご相談を受け付けています。ぜひお気軽にお尋ねください。
(2025年10月8日)
本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
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以 上