親の体調変化に気付いたら―健康寿命とチェックリスト―

親のために、子のために、介護について知っておきましょう

 年齢を重ねると、体調を崩したり、日常生活に不便が生じたりするのは自然なことです。

 体調変化に早めに気付くことができれば、幸せな時間を長く持つことができ、介護が必要になった時にも慌てず準備することができます。

目次

両親が高齢になってきて不安です
まずは、体調変化を早めに察知しましょう!

 日本は世界有数の長寿国です。そして、年齢を重ねると体力が落ちたり、健康を損ねたりして介護が必要になることがあります。

 「平均寿命」は命の長さを表しますが、「健康寿命」は健康的に生活できる期間、日常生活に制限のない期間を表します。

 2016年の厚生労働省調査では、男性は平均寿命80.98才・健康寿命72.14才、女性は平均寿命87.14才・健康寿命74.79才です。平均寿命と健康寿命の差は日常生活に制限がある期間ですので、男性は約9年、女性は約12年健康を損ねていると言えます。また、親の介護・看護のために離職・転職する人も増加し、子世代にも大きな影響が生じています。

平均寿命と健康寿命の推移

資料)平均寿命:平成13・16・19・25・28年は、厚生労働省「簡易生命表」、平成22年は「完全生命表」
健康寿命:平成13・16・19・22年は、厚生労働科学研究費助成金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」、平成25・28年は「第11回健康日本21(第二次)推進専門委員会資料」

出所)令和2年版高齢社会白書(概要版)(内閣府)

 親にとっては健康で長生きできることが幸せですし、子にとっては親が元気でいてくれることが重要です。そのためには、できるだけ早く不調を察知し、症状の進行を遅らせることが必要です。今は、一般的な病気も認知症も投薬によって進行を遅らせることが可能なのです。

親と別居しています、変化には簡単に気づけますか?
旅行に出かけると、ちょっとした変化に気づけます!

同居の場合

 毎日会っているからこそ、少しの変化に気付きにくいという側面があります。

別居の場合

 親は子に心配をかけたくないと考えていて、なかなか弱音をはきません。たまに帰省すると気分や精神が高揚して、しっかりした姿をみせがちです。また、電話で「ちゃんと食事している?」と聞いても「大丈夫、心配しないで」「きちんと食事してるよ」と答えられるばかりです。

 親を年寄り扱いするのは良くありませんが、「体力が低下している」「体調を崩しても不思議ではない」と意識して見守ることが重要です。旅行に出かけて一日中一緒にいると、着替え・荷物の整理・食事・睡眠などからちょっとした変化に気付くこともできます。

体調変化は、どんな項目をチェックしたらいいの?
厚生労働省が介護予防のチェックリストを作成しています

 厚生労働省が作成した介護予防のチェックリストを使用してみると、要介護状態等になるおそれが高いかどうかを調べることができます。

要介護状態を予防するための基本チェックリスト

 基本チェックリストにおいて、次の①~⑦までのいずれかに該当する者を、要介護状態等となるおそれの高い状態にあると認められる者として、二次予防事業の対象者とする。

  • No.1~20までの20項目のうち10項目以上に該当
  • No.6~10までの5項目のうち3項目以上に該当
  • No.11~12の2項目のすべてに該当
  • No.13~15までの3項目のうち2項目以上に該当
  • No.16に該当
  • No.18~20までの3項目のうちいずれか1項目以上に該当
  • No.21~25までの5項目のうち2項目以上に該当
  • 該当(No.12を除く)とは、回答部分に「1.はい」または「1.いいえ」に該当することを言う。また、該当(No.12)とは、BMIが18.5未満の場合を言う

出所)「介護保険法施行規則第百四十条の六十二の四第二号の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準」の様式第一、様式第二をもとに作成

 親が自分自身でチェックしても良いですが、若さが失われていることを認めたくない気持ちから、正直に回答されない可能性もあるので、子の視点など「複数の目」で観察することも必要です。

気になることは、だれに相談したらいいの?
まずは、早めにかかりつけ医に相談しましょう!

 体調に気になることがあれば、早めにかかりつけ医に相談しましょう。必要に応じて、かかりつけ医に紹介状をもらい、総合病院などを受診します。

 症状を正確に伝えたり、医師の話を理解したりするのが難しそうな場合は、子が付き添うことが理想です。毎回は難しくても、最初の診療や検査結果を聞くタイミングでは付き添いましょう。また、1人に負担が集中しないように、兄弟などで連絡をとりあい協力することも必要です。LINEなどでグループを作成すると、手軽に複数の人で連絡をとることができるので便利です。

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【監修】井戸 美枝(いど みえ)

CFP、社会保険労務士。国民年金基金連合会理事(非常勤)。
経済エッセイストとして活動。「難しいことでもわかりやすく」をモットーに、数々の雑誌や新聞の連載記事の執筆をはじめ、講演、テレビ、ラジオ出演などを通じ、生活に身近な経済問題、年金・社会保障問題を紹介。
近著に『身近な人が元気なうちに話しておきたいお金のこと介護のこと』(東洋経済新報社)、『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください』(日経BP社)、『残念な介護 楽になる介護』(日経プレミアシリーズ)など。

井戸 美枝

(2021年6月7日)

本コラムの内容は掲載日現在の情報です。
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以 上

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